~毎月1回お届けする相続に関するエッセイ風コラム~

 

☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 
目次
(2024年6月) 紀州のドンファン元妻に詐欺容疑
(2024年5月) 共同親権への扉が開かれる
(2024年4月) 遺留分の侵害とは?
(2024年3月) 「遺贈寄付」が増えています
(2024年2月) 世代の移り変わりと「Z世代」
(2024年1月) 遺言書のデジタル化の動き
(2023年12月) 相続登記をお急ぎください
(2023年11月) 空き家の有効活用を考える
(2023年10月) 不要な空き地をなくすには
(2023年9月) 福原愛さんの長男と共同親権
(2023年8月) 任意後見制度の目的としくみ
(2023年7月) 家族信託の目的としくみ
 
(2023年12月~1月) 目次
(2022年12月~1月) 目次
(2021年12月~1月) 目次
(2020年12月~1月) 目次
(2019年12月~1月) 目次
(2018年12月~1月) 目次
 

☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 
【2024年6月】
紀州のドンファン元妻に詐欺容疑
 
※6月の「紀州のドンファン元妻に詐欺容疑」は、今月中はオレンジ司法書士事務所の「相続手続き」ページに掲載されていますので、こちらをクリックしてご覧ください。
 

☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 
【2024年5月】
共同親権への扉が開かれる
 
以前も何回か取り上げていますが、最近共同親権に関する話題が二つありましたので、それについてふれてみたいと思います。一つは元五輪卓球選手の福原愛さんが3月に都内で記者会見し、4歳の長男の親権を巡って元夫の台湾の江宏傑氏との間に和解が成立したことを発表しました。
福原さんは2016年に江氏と結婚し長女と長男が生まれましたが、21年に離婚。その長男を一昨年の夏休みに日本に連れ帰り、連絡がつかなくなっていると江氏が訴えを起こし、その後東京家庭裁判所から福原さんに長男を引き渡すよう保全命令が出されていました。

台湾では離婚後は共同親権なのでお互いに子供とは平等に接することができ、夏休み中は福原さんが二人の子供を預かる約束になっていたようですが、なぜか空港で江氏が突然反対し、長男だけ連れ帰ったとも言われています。その後も双方の弁護士が会見や声明を出すなど、対立が続いていました。
日本では離婚後は夫婦どちらかの単独親権ですが、台湾やヨーロッパなど諸外国では共同親権が一般的です。共同親権には、離婚時に親権争いが起きないこと、離婚後も子供が父母と交流ができ養育費の不払いが比較的少ないこと、教育について父母と子供が一緒に話し合えることなど多くのメリットがあります。その一方で、福原さんのように父母の間で意見の相違があると揉めてしまい、子供が板挟みになって苦しむなどのデメリットもあるとされます。

共同親権の親子

 
1996年のハーグ条約で、国境を越えて子供の連れ去りが起きた場合は原則として元の居住国へ迅速に返還することが定められていますが、単独親権のわが国では適用されないため国際結婚などで離婚した後に日本へ子供を連れ帰ってしまうトラブルが起きていました。こうした問題もあって、共同親権導入の法改正が多くの議論を踏まえながらこれまで進められてきました。
その結果先月16日に、もう一つの話題である共同親権についての民法改正案が衆院本会議で可決されました。成立すれば2026年までに施行されることになります。

 
この改正案では懸念されているいくつかの問題について、まず夫婦で合意に至らなかったり裁判を経て離婚する場合には、家庭裁判所が共同親権にするか父母どちらかの単独親権にするかを判断することになりました。また離婚後の共同親権によって、父母の一方による家庭内暴力(DV)や虐待が離婚後も続きかねないとの不安や危惧については、そうしたおそれがある場合は家庭裁判所がどちらかを単独親権者とすることを明記しました。
このように、わが国においてもようやく共同親権への新たな扉が開かれました。これは今後も増え続けると予想される離婚後の子供を巡る不安やトラブルの解決に、一つの光明を与えるきっかけになりそうです。しかし運用面ではまだ多くの課題がありそうで、いろいろなケースについての十分な議論が望まれるところです。

 

☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 
【2024年4月】
遺留分の侵害とは?
 
先月は遺贈による寄付の話をしました。そこでもちょっと触れましたが、相続人への遺言作成や第三者への遺贈(遺言による贈与)を行う場合に注意しなければならないのが遺留分という問題です。
これは通常の相続においては、法定相続人であれば最低でも法定相続割合の半分(直系尊属のみが相続人の場合は三分の一)の遺産を受け取る権利があり、それを遺留分と呼んでいます。残された相続人の生活保障といった意味あいもあるようですが、遺言や遺贈により受取る額がその遺留分を下回る場合は遺留分が侵害されたことになります。

 
このような場合は、侵害された相続人はそれを不服として家庭裁判所に「遺留分侵害額請求調停」の申し立てを行うことができます。(ただしこれはあくまでも権利であって、放棄することももちろん可能です)
このようなことが起きないように、遺言や遺贈を考える場合は特別な事情がない限りあらかじめ相続人の遺留分に配慮し、それを侵害しない範囲で遺言や遺贈のプランを立てることが望ましいと言えます。そのためにはやはり遺産となる財産の全体像や、誰が相続人なのかをきちんと把握しておくことが大切なのは言うまでもありませんが。

遺留分侵害

 
とは言え相続人が複数いたりあるいは財産を贈与したい第三者がいる場合などは、感情的な問題やいろいろな事情が絡んで、特定の人を極端に優遇した遺言や遺贈をすることもないとは言えません。例えば姉妹が複数いるのに「長女に全財産を相続させる」と遺言するなどです。すると後で次女などから遺留分が侵害されたとして「争族」になるおそれがあります。
そうならないように、遺言作成時には各相続人の遺留分や受取人の適切な遺産配分などに十分留意することが重要と言えます。

 
そもそもこのように相続人や贈与したい第三者などが複数いる場合は、被相続人と相続人あるいは第三者との関係だけでなく、その人たち同士の思いや関係も複雑になってきます。特に金銭だけでなく不動産が関係してくると、一筋縄では行かないことが多くなります。たとえ親子や兄弟姉妹、親族と言えども、よほどの信頼関係がないとトラブルがつきものです。それは遺産額の大きさによらず、むしろ少ない方が分配が難しくなるとの説もあります。
なお遺留分侵害の請求権は、相続の開始と遺留分の侵害があったことを知った日から一年以内に請求しないと権利が消滅してしまいますので注意が必要です。

 

目次に戻る

 

☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 
【2024年3月】
「遺贈寄付」が増えています
 
年明けに能登半島地震で大きな被害があったことも影響してか、先日のNHK「クローズアップ現代」で自分の財産を「遺贈寄付(いぞうきふ)」する人が増えている話をしていました。「遺贈寄付」とは、「遺贈」すなわち遺言による贈与によって寄付するという意味ですが、その総額は年間400億円近くに上るそうです。
背景としては団塊世代の高齢化などにより一人世帯や子供のいない夫婦だけの世帯が増え、必ずしも遺産を家族に残さなくてもよいとの考え方が浸透してきていることがあげられます。

一般的な「遺贈」は自分の相続財産を第三者に贈与することですが、「遺贈寄付」は社会貢献活動に寄与することを目的として公益法人やNPO法人、学校法人や国立大学法人などへ相続財産を譲渡することを意味します。これによってその団体の活動を支え、社会的な課題が解決されるようにしていくものです。
欧米では人生最後の社会貢献として古くからよく利用されていますが、日本でも新たな寄付の方法として最近注目され始めています。地域社会や将来を担う子供たちのために役立てたいなど、寄付を行う理由はさまざまとなっています。

 

遺贈寄付

 
遺言がなければ遺産は法定相続人に相続されますが、相続人が誰もいない場合は国庫に入ることになります。しかしこのような「遺贈寄付」にすれば、死後に財産の行き先を自分の意思で決めることができます。
「遺贈寄付」の主な方法としては、生前に財産の全部または一部を寄付することを遺言で残しておくのが代表的ですが、「死因贈与」契約により死亡後に寄付する契約を締結しておく方法もあります。また生命保険に加入し、死亡保険金の受取人として公益法人などを指定したり、あるいは同じように財産の全部または一部を公益法人などに寄付する信託契約を信託の受託者と締結する方法もあります。
 
なお相続人がいる場合は、一部を相続人に相続し、残りを「遺言贈与」とすることもあります。この場合は相続人の心情に十分配慮した遺産配分をすることが求められます。相続人の「遺留分」を侵害しないようにすることはもちろん、生前の関係や心情などを考慮して不満のない配分を行うことが大切です。
また死後に相続人が「遺贈寄付」のことを初めて知ったりすることのないように、生前のうちに「遺贈寄付」を行う意思をしっかり伝えておくことも必要でしょう。

 

目次に戻る

 

☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 
【2024年2月】
世代の移り変わりと「Z世代」
 
最近は遺言書だけでなく、全てのことで何かとデジタル化が強調されています。ついこの間まではITと言っていたような気がするのですが、今ではDX(デジタルトランスフォーメーション)と呼ばれ、政府や自治体でも盛んに使われています。それに伴って私たちの生活も変わらざるをえないようですが、そうしたDXを子供の頃から当り前のように利用しているのが「Z世代」の人たちです。
この「Z世代」というのは、マイクロソフトからWindows95が発売された1990年代後半から2010年頃までに生まれ、年令的には10代から20代前半の人たちを指すと言われます。

同じような言葉として「X世代」「Y世代」というのもあり、これらはアメリカで使われ始めた呼称です。もともとアメリカでは1960年~70年代生まれを「X世代」、80年~90年代前半生まれを「Y世代」と呼んでいましたが、その流れでそれに続く世代を「Z世代」と呼ぶようになりました。しかし日本では「X世代」「Y世代」はあまり使われず、「Z世代」だけが注目され使われています。
「Z世代」はデジタルネイティブとも呼ばれ、生まれた時からパソコンが手元にあり、今ではスマホやタブレットを駆使してSNSによる情報収集や発信を繰り返しているまさにDXの世代です。

Z世代
〇〇世代という呼称は、日本でもこれまでいろいろと使われてきました。主なものはまず戦後のベビーブームだった1947~49年生まれの「団塊の世代」で、学生運動を経験し高度経済成長期が始まった頃に社会人となった世代です。
次の1950〜64年生まれが「しらけ世代」と呼ばれ、現在のほぼ60代の人たちで、団魂世代に比べ無気力・無関心であったことに由来します。次いで似たような「新人類」という言葉も登場しました。
その後は 60年代後半に生まれ、バブル景気の頃に社会人となった「バブル世代」で、長時間労働や接待が当たり前の人たちでした。次いで1970年代以降に生まれた「就職氷河期世代」は失われた世代とも呼ばれ、バブルがはじけて正社員になれず非正規で働くことが多かった人たちです。この「就職氷河期世代」は「団塊の世代」の子供の「団塊ジュニア世代」とも重なります。

次が1990年代から2000年代前半生まれの「ゆとり世代」で、詰め込み教育からの転換の時代に学齢期を過ごし、働いて残業するよりワークライフバランスを重視した世代です。これはアメリカの「ミレニアル世代」とほぼ重なり、次の「Z世代」へと続きます。
「Z世代」は日本では少子高齢化のため少ないですが、世界では全人口の約3割を占めるほど多く、これからの主流となる世代です。さらに近年は次の「α世代」という言葉も登場しています。
相続は遺産を次世代にバトンタッチするものと言われますが、こうした新しい世代は急激に変化するDX社会の中ではたして遺産をうまく承継できるのでしょうか。昨今の世情を見ると、私などは少々不安になってしまいます。

 

目次に戻る

 

☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 
【2024年1月】
遺言書のデジタル化の動き
 
新年早々、震災や事故が続きましたが、早く平穏な日々が戻ってほしいものです。
さて今回は久し振りに遺言書の新しい動きについて取り上げてみます。
近年は高齢者の方々のパソコンやスマホの使用が増えており、それに合わせて法務省では遺言書のさらなるデジタル化の方法を検討中です。具体的にはこれまで必ず手書きとされていた「自筆証書遺言」の本文においても、パソコンなどデジタル機器での作成が可能という方向で議論が進められています。
遺言書について少しおさらいをしておきますと、まず作成方法には主に二種類あります。一つは公証役場で証人二名立会いのもと遺言者の意思にもとづき公証人が作成する「公正証書遺言」です。こちらは間違いが起こりにくい確かな方法ですが、手続きがやや面倒なのが難点です。

あと一つは遺言者が自分で自由に手書きで作成する「自筆証書遺言」です。こちらは作成は比較的容易ですが、全文を本人が手書きしなければならず、また書式に不備があれば無効となります。さらに第三者による改ざんや紛失といったリスクもあります。
この「自筆証書遺言」に関しては、これまでそのリスクやデメリットを少なくするためいくつかの対策が講じられてきました。そして民法改正による方式緩和によって、本文を除く財産目録についてはパソコンでの作成が認められ、また預貯金などは通帳コピーを添付し、それに署名押印することが認められるようになりました。

遺言書デジタル化
さらに保管場所がわからなくなったり、偽造や破棄される心配を無くすため法務局で保管できる制度が設けられました。この際に法務局がある程度様式のチェックをしてくれる他、画像情報として保存されるため相続人などからの請求に応じて証明書を発行してもらえたり、相続人死後の家庭裁判所による「検認」も不要となるなどのメリットがあります。この保管制度の利用件数は、現在年間約1万8000件ほどになっています。
このようにさまざまな対策が取られてきた「自筆証書遺言」ですが、今後のデジタル化で議論される方向としては本人の意思確認及び改ざん防止策が焦点になりそうです。そのため手書き署名や電子署名の活用、あるいは入力する様子の録画や代理として家族の入力を認めるかどうかといった案が議論されるようです。

いずれにしても遺言書を作成するには、まず相続人が誰で、相続財産はどれだけあるかをきちんと把握することが必要です。最近は金融資産もオンライン化やキャッシュレス化が進み、必ずしも通帳や証券といった目に見える形で確認できないこともあります。こうしたものを逐一チェックし、財産目録を作成しておくことが大切です。
また複数の相続人に対し、遺産を誰にどのように分割して相続させるかの問題があります。それには相続税のことを含め、相続人の間で不公平感が出ないように十分配慮して遺言書を作成することも大切と言えます。

 

目次に戻る