~毎月1回お届けする相続に関するエッセイ風コラム~

 

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目次
(2021年11月) 家族葬が増えている
(2021年10月) 遺産をうまく分けるには
(2021年9月) 二度としたくない大変な作業
(2021年8月) 遺言で失敗しないために
(2021年7月) 地価の評価額あれこれ
(2021年6月) 半血って、何のこと?
(2021年5月) 紀州のドンファン事件元妻逮捕
(2021年4月) 高齢者のフレイル予防対策
(2021年3月) 相続登記が義務化されます
(2021年2月) 「死因贈与」ってどんな意味?
(2021年1月) 相続を代襲するとは?
 
(2020年12月~1月) 目次
(2019年12月~1月) 目次
(2018年12月~1月) 目次

 

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【2021年11月】
家族葬が増えている
 
最近テレビなどでよく家族葬のCMが流れています。葬儀と言えば昔は大勢の参列者が集まって順番にお焼香をあげる姿を思い浮かべましたが、最近は少人数の家族葬が増えているようです。
コロナ禍で多数の人が集まる機会を減らしたいこともあるようですが、それだけでなく葬儀のあり方自体が大きく変化してきています。わが国の葬儀の大半は仏教葬で、お通夜と告別式を2日間で行うのが一般的です。僧侶による読経や参列者の焼香などを行い、その規模はできるだけ大きい方が良いとの風潮もあったようです。
しかし時代とともに地縁が希薄となり、また核家族化や高齢化により親族も少なくなるなどで葬儀の考え方が変化し、形式にこだわらない家族葬を選ぶ人が増えてきました。

では家族葬とは、どんな葬儀のことなのでしょうか。簡単に言うと、家族や親族、友人など故人と親しかった人だけでゆっくりお別れをするコンパクトな葬儀のことです。ただし何人までといった参列者の制限はなく、はっきりした定義があるわけでもありません。場所や形式なども比較的、自由に決めることができます。
基本的な流れは一般の葬儀と変わらず、まずお通夜がありその翌日に告別式を行います。最近では高齢者の負担にならないように、お通夜を行わず告別式のみの一日葬とすることもあるようです。
似た言葉として密葬がありますが、こちらは大規模な本葬と別に家族や近しい人のお別れの場として設けられる葬儀で、家族葬とは別のものです。

 
家族葬
家族葬の費用については、よく一式〇〇万円といった安価な広告を見かけますが、追加費用がかさんでしまうこともあるので注意が必要です。一般的に葬儀費用は、お布施、会場使用料、料理代、会葬返礼品代、祭壇、棺で全体の8割を占めると言われます。参列者が少ないので料理や返礼品の費用は抑えられますが、その分受け取る香典も少なくなります。そうした点も考えながらどのような予算の範囲内で行うのか、葬儀社とよく相談しながら決めることが大切と言えます。

家族葬のメリットは、家族の負担を軽減し故人の生前の趣味嗜好を反映したアットホームな葬儀が行える点にあります。一般の葬儀ではどうしても準備や参列者への対応に追われてしまいますが、家族葬であればその負担はかなり軽減され、故人との最後の時間を静かに過ごすことができます。
逆に家族葬の難しさは、参列者の選定です。故人との関係などでその範囲をどこまでに限定するかは、かなり悩ましい問題となります。

このようにメリットの多い家族葬ですが、それを終えた後にいろいろとやらなければならないことがたくさんあるのは、一般の葬儀と何も変わりません。
年金や健康保険、住民票などの役所への手続き、金融機関への預貯金払戻しの手続き、また各種の相続手続き、さらには法要やお墓、遺品整理等、やるべきことは山積しています。
これらの大変なことが後に控えていますので、葬儀については負担の少ない家族葬で済ますというのは一つの立派な考え方と言えるかもしれません。

 

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【2021年10月】
遺産をうまく分けるには
 
遺産とは簡単に言えば被相続人(亡くなった方)が遺す財産のことですが、この財産にもいろいろな種類があります。例えば土地や建物などの不動産、預貯金、株や債券などの金融証券、絵画や骨董品、等々です。これらはある種の形があって目に見えるため、「有体財産」と呼ばれます。
一方で、形がなくて目には見えない「無体財産」というのもあります。例えば特許権や著作権などの知的財産権、事業の継承権、漁業権といったものです。また現在は価値があまりないものの、将来において価値が発生する生命保険のようなものもあります。(生命保険は受取人固有の権利で相続財産の対象とはなりませんが、みなし相続財産として相続税の対象にはなります)

このように見てくると一口に財産と言っても多種多様であり、分割しやすいものもあれば分割しにくいもの、さらには分割すると不都合なものがあることもわかります。相続においては、こうした遺産を相続人同士で分けなければならないケースが多々あります。
相続人が一人だけなら問題はないのですが、複数の場合は相続放棄者を除いて遺産を何らかの方法でうまく分ける必要があります。遺言があり配分方法が的確に指示されていれば良いのですが、そうでなければ相続人が親族といえども様々な事情から分割の話し合いで揉めることが多いのです。
今回はこうした争いをできるだけ避けるため、遺産を分ける方法について見て行きたいと思います。その主な方法としては、下の4つがあります。

 
遺産の分け方
1.現物分割
相続人Aには不動産を、Bには預貯金というように、誰がどの財産を受け取るかを個別に割り振って決める方法です。うまく割り振って配分できれば良いのですが、遺産が不動産だけの場合などは分割して配分することが難しく、他の方法を考える必要があります。
2.代償分割
その相続人が他の相続人に金銭を支払う(代償する)ことにより、その財産を受け取る方法です。金銭でなくとも、物や権利などによる代償でもかまいません。不動産や事業承継など分割しにくいもの、あるいは分割すると不都合が起こるものに幅広く利用されます。
3.換価分割
相続財産を売却して金銭に換え(換価)、それを各相続人に割り振って配分する方法です。財産が分割しにくいものあるいは分割すると不都合が起こるもので、かつ換価しやすい場合によく利用されます。金銭による配分なので、すっきりした方法と言えます。
4.共有分割
主に不動産の場合に利用されますが、それぞれの分割割合に応じて相続人同士で共有する方法です。方法としては比較的簡単ですが、名義を共有すると後で売却やリフォームをする時などに共有者全員の同意が必要となるなど、やや手続きが面倒になります。

これら4つの方法の特徴をよく理解しておくことが大切です。1つの方法でうまく配分できることもありますが、場合によってはいくつかの方法の組み合わせにより解決できることもあります。
財産の種類をよく見究めながら、できるだけ不平不満のない公平な配分が行えるように相続人同士で知恵を出し合ったり、あるいは専門知識を有する私たち司法書士などと相談しながら分割協議を進めることが望ましいと言えます。

 

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【2021年9月】
二度としたくない大変な作業
 
今月はテレビにもよく出ている経済評論家森永卓郎さんの、ある雑誌に載っていた相続に関する失敗談をご紹介したいと思います。
森永さんの父は、生活や家のことはすべて母任せでした。母が急逝したため、その父を自宅に引き取ります。しかし脳出血で倒れて介護が始まり、森永さんの妻が長年世話をしますが、最後は介護施設に入居して亡くなります。
父の生活費はすべて森永さんが支払い、介護施設の費用も当初は父の口座から振替えていたものの、すぐに底をつきます。父に他の預金や資産はないか聞いたところ、あるが銀行名も通帳の保管場所もわからないとのこと。森永さんにとりあえず払っておいてくれと言う。それが大きな間違いだったと、後で気付きます。

父は銀行の貸金庫を利用していて森永さんが代理で開けられたのですが、中身を確認しておらず、通帳や印鑑、証券などがそこに入っていると信じていました。ところが父の死後、貸金庫を開けたところ、中は大学の卒業証書や記念写真など思い出の品ばかり。結局自力で探さなければならなくなり、それから苦難の日々が始まります。
父宛の郵便物から手がかりを探すそうと一つずつ調べた結果、複数の口座が判明。しかし銀行に行って確認を頼んだところ、何と父親が生まれてから亡くなるまでのすべての居住地で戸籍謄本を取り寄せてほしいと言われます。父は転勤であちこちに住んでいたので、それぞれの役所に行くのは大変です。電話で問い合わせたら申請書を出せば郵送してくれるとのことですが、郵便だと多くの日数がかかってしまうので、結局何ヵ所もの役所へ苦労して自分で足を運んだそうです。

貸金庫
このように森永さんにとって、相続の手続きはもう二度としたくないほどの大変な作業でした。それでも預貯金は数千万円、また父所有のマンションや駐車場もありましたので、法定相続人である森永さんと弟の2人で基礎控除を超える分の相続税を納め、すべての手続きをようやく終えることができました。
父を引き取ってから11年間にかかった費用は、介護した妻の人件費も合わせるとおよそ5000万円くらい。しかしそれを証明するものはありません。父には十分な貯金がありましたから、介護費用を父が支払っていればそのぶん相続財産が減り、基礎控除内に収まったはずです。
森永さんは、原則として親の生活費や介護費は親の貯金や年金から払うべきで、自分が立替えた場合は記録して精算しておくべきだったと後悔しています。

遺産分割については法律上は弟と折半ですが、妻は父の世話をしてお金も使っています。それで折半はおかしいのではと妻も釈然としない様子でしたが、兄弟で揉めたくなかったので合意しました。
介護をする場合は諸経費や介護記録をノートなどに記し、領収書を貼付することすすめています。なお現在は法律改正により義理の親を介護した場合は「特別の寄与」が認められ、法定相続人にお金を請求できるようになっています。

それと父の死から相続までの日々で痛感したのは、とにかく現金が必要なこと。亡くなるとすぐに通夜や葬儀のお金を用意しなければなりませんし、相続税も原則キャッシュです。遺産の多くが不動産だとすぐ売却することは難しく、現金の準備は欠かせません。森永さんはいま終活の準備を始め、財産リストをパソコンに打ち込んでデータを保存しているとのこと。
この森永さんの話を、皆様も大いに参考にして頂きたいと思います。

 

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【2021年8月】
遺言で失敗しないために
 
コロナ禍の最中ですが、オリンピックも大いに盛り上がりましたね。特に若い人たちが頑張ってメダルをたくさん取ったのは嬉しいことです。
さて今月は、遺言に関して取り上げたいと思います。よく相続がもめて「争族」になってしまうのは、必ずしも遺産が多いからとは限らないと言われます。1億円以上よりも、5千万や1千万円以下の方がもめやすいとのデータもあります。高額なら分け合うにも余裕がありますが、少額ではそうはいかないこともあるようです。「争族」を避けるためにも、誰にどのように遺産を分配するかを遺言できちんと示しておくのは大事なことと言えます。

ただし注意すべき点として、遺言を書くのはそれほど簡単な話ではありません。まずは自筆証書遺言にするか公正証書遺言にするかなど、方法の選択をしなければなりません。自筆証書遺言については近年法務局での保管制度が設けられましたが、それぞれの方法についてメリットやデメリットをよく比較し、ご自分に合ったものを選択することが望まれます。
こうした方法以上に重要なのが、やはり遺言の内容です。法務局の保管制度にしても様式はある程度チェックしてくれるものの、内容について立ち入って審査するわけではありません。

遺言失敗
遺言とは言うまでもなく自分の死後の相続に関する指示を書き残すことですが、誰しも現在の状態はよくわかっていても、死後のことに関しては不確定のことが多くそれなりの知識や想像を働かせないと的確につかめないことも多いのです。
さらに言えば相続が発生するまでの間にも何が起こるかわかりませんし、本人が認知症になってしまわないとも限りません。ですから現状の確認はもちろんとして、相続に至るまでのこともさまざまな可能性を考えながら幅広い視野で見ておくことが重要と言えます。

基本としては当然ながら相続人が誰で、相続財産は何がどれだけあるかをきちんと把握することから始まります。最近は金融資産もオンライン化やキャッシュレス化が進み、必ずしも通帳や証券といった目に見える形で確認できないこともあります。生命保険なども満期が過ぎて、忘れてしまっていることもあります。
こうしたものを逐一チェックし、財産目録を作成しておくことが大切です。このようにパソコンで作成した目録を遺言書に添付することが可能になりましたので、後で訂正する場合も比較的容易にできます。

さらに相続人が複数いる場合は、遺産を誰にどのように分割して相続させるかという遺産分割の問題があります。それには相続税の配偶者控除などを考慮し、一次相続だけでなく二次相続まで含めて考えておくことや、相続人の間で不公平感が出ないように特別受益の持ち戻しや遺留分のことなどもあらかじめ想定して検討する必要があります。
いずれにしても遺言を的確に書くのはそう簡単なことではありませんので、いろいろな点に細心の注意を払いながらその内容をお決め頂くことが望ましいと言えます。

 

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【2021年7月】
地価の評価額あれこれ
 
毎年7月1日になると国税庁から土地の路線価が公表され、どこの地価が上がったとか下がったとかが話題になります。この路線価は1月1日時点のもので相続税や贈与税の算定基準となるものですが、今年は全国平均で前年比-0.5%と実に6年ぶりの下落でした。都道府県庁所在地別に見ると、関西では奈良市-12.5%、神戸市-9.7%、大阪市-8.5%などと下がっています。
特に大阪市の繁華街ミナミの中心部心斎橋筋は-26.4%と全国一の下落幅となっていて、突出しています。これはコロナ禍によりインバウンド需要が消失したことや飲食店の営業自粛のせいと見られていますが、ある新聞記事によると中国人投資家たちが投資物件を途中で投げ出したことなども影響しているようです。

土地の価格については、この路線価以外にもいくつか公表されています。主なものとしてはまず国土交通省による公示地価で、これは毎年1月1日時点の全国の標準地の1㎡あたりの地価を3月下旬に発表しています。さらに各都道府県による基準地価というものがあり、これは毎年7月1日時点の全国2万ヶ所以上の基準地の1㎡あたりの地価を9月下旬に発表しています。
どちらも国土交通省が運営する『土地総合情報システム』の中の「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」から検索できます。路線価については、国税庁の「路線価図・評価倍率表」で確認できます。
なお路線価は、公示地価と基準地価の80%の評価割合になるという特徴があります。

地価
一般の人にとってなじみがある不動産の価格表示としては、やはり市区町村からの固定資産税評価額による納税通知書でしょう。毎年4月から6月頃に、不動産の所有者に送付されて来るものです。土地と建物が別々に計算され、評価額を算出する基準となる課税標準額も記載されています。
この評価は毎年ではなく3年に一度となっていて、各市区町村の不動産鑑定士が実際に不動産を確認して行います。評価方法はそれほど簡単なものではなく、土地であればその場所や広さ、形状、道路との接し方など、また建物ならば築年数、建築材料や構造、規模などさまざまな条件から総合的に評価します。
課税標準額と評価額は、建物においてはほぼ一致しますが、土地の場合はその地目や用途区分などで少し変動します。

このように市街地の地価は周囲の環境や条件により大きく左右されますが、路線価を使用して相続税や贈与税の評価額を算出する方法を路線価方式と言います。国税庁の「路線価図・評価倍率表」の数字や記号を見て計算しますが、少し知識が必要ですので正確に算出したい場合は専門家に頼むのが望ましいでしょう。地方や郊外など路線価が付いていない地域は、評価倍率を使用した倍率方式により計算します。
なお不動産の実勢価格の目安を知りたい場合は、その70%ほどが固定資産税評価額になっていますので、固定資産税評価額から逆算(÷0.7)するのも一つの有力な方法です。

 

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【2021年6月】
半血って、何のこと?
 
このコラムでも時々取り上げていますが、相続には民法関係の用語が多く、耳慣れないものもあります。この半血(はんけつ)もそうです。辞書やネットで「はんけつ」と入力しても、判決や半尻(お尻の上半分が見えている)が出てくるだけです。
ネットでは漢字で入力するとさすがに正しい言葉が出て、異母兄弟姉妹や異父兄弟姉妹など半分だけ血がつながっている関係とわかります。ですから両親とも共通の兄弟姉妹は、全血(ぜんけつ)の兄弟姉妹ということになります。

近年の統計では、年間の婚姻数は約60万件なのに対し離婚数は20万件ほどで、そのためよく3組に1組の割合で離婚すると言われます(すぐに離婚するわけではなく、婚姻から一定年数が経過しての離婚ですから、この言い方はやや誤解を招きますが)。
ここで注目したいのは婚姻数の内、夫婦いずれかまたは両方が再婚というケースが約18万件に上ることです。これらの数字を見ると、昔のように夫婦が生涯我慢して連れ添うということは少なくなり、離婚や再婚はある意味で当り前のようになったと言えます。その結果、父母いずれかが連れ子を伴って再婚しそこに新しい子が生まれると、半血の異母兄弟姉妹や異父兄弟姉妹が誕生することになります。

非嫡出子
このような半血の兄弟姉妹であっても、通常その両親が亡くなった場合などは子供として同等の相続割合で相続できます。ただし特定のケースでは1/2になることがあります。
例えば被相続人に子供がなく、直系尊属もすでに亡くなっていて、相続人としては全血と半血の兄弟姉妹が2人だけいるといった場合です。全血同士なら半分ずつとなりますが、この場合は半血は全血の1/2となるため、全血が2/3、半血が1/3の相続割合となります。

この半血の兄弟姉妹と似たような言葉として、非嫡出子があります。これは婚姻していない男女の間に生まれた子供という意味です。一般的に母親と子供は自動的に親子関係となりますが、父親が子供と親子関係を結ぶには「認知」の手続が必要です。そのことにより出生時に遡って親子ということが認められます。
この非嫡出子ですが、以前は相続において嫡出子の1/2となっていましたが、平成25年の民法改正により同じ法定相続割合となりました。男女が婚姻しているいないに関わらず、子供には同等の権利を与えるという考え方によります。

いずれにしても現代においては夫婦や親子関係が多様化し、相続においてもなかなか込み入った事情を抱えるケースが増えています。
相続手続きの基本としては、まず相続人が誰なのかを確定させることが前提となります。ふだんから付き合いのある親族だけならともかく、遠方に住んでいて関係がよくわからなかったり、あるいは被相続人の戸籍を調べたところまったく知らない人が子供として認知されていたなどということもあります。
遺産分割協議を行うには相続人すべての参加が必要ですが、こうした場合は話がまとまりにくいことが多いので、事前のきちんとした準備や対策が欠かせないと言えます。

 

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【2021年5月】
紀州のドンファン事件元妻逮捕
 
変異株による感染拡大の影響で、先月末から東京、大阪など4都府県に緊急事態宣言が発出され、コロナ禍はまだまだ収まる気配がありません。そんな最中に、紀州のドンファン事件で元妻が逮捕されるというニュースが飛び込んで来ました。
この事件はちょうど3年前の5月に、当時77歳の資産家だった野崎さんが自宅で覚醒剤により死亡したことから始まりました。この頃、「後妻業」という言葉が使われ出したこともあり、わずか3ヶ月前に歳の差50以上で結婚した若い妻に疑惑の目が向けられました。さらにその後遺言書が出て来たことで、高額の遺産相続問題がからむミステリー的な謎解きの要素も加わって大きな反響を呼んだ事件です。当コラムでも以前3回にわたり取り上げていますが、相続の面から再度その内容を振り返ってみたいと思います。

 
特に重要なのは遺言書の存在です。亡くなる5年ほど前に書かれた自筆証書遺言ですが、コピー用紙に赤ボールペンで〈いごん〉として〈全財産を田辺市にキフする〉などと簡単に書かれていたようです。この遺言書をめぐり、野崎さんの親族(兄弟たち)がその「発見された状態が不自然」であり、「大の役人嫌いだったので田辺市に寄付するなど考えられない」「生前に遺産は愛犬のイブに渡したいと言っていたのに、一言もふれていないのはおかしい」などと、それが無効であるとの申立書により2019年8月に訴訟を起こしました。
 
覚せい剤
この遺言書が有効か無効かにより、遺産の受け取り人とその金額は大きく変わります。有効であれば、田辺市と共に遺留分を請求できる妻が3/8(3/4×1/2)を受け取れるのに対し、遺留分がない兄弟は何も受け取れません。逆に無効であれば田辺市は無関係となり、法定相続人である妻が3/4と兄弟が1/4を受け取れます。妻は無効の方が受け取り額は多いのですが、親族たちと分割協議を行うのを避けたいためか訴訟には関与せず、有効で田辺市と遺産を分け合うことを望んでいたようです。
ちなみに遺産総額は当初は50億円などと言われたこともありましたが、その後田辺市が調べたところでは未返済の貸付金などを差し引くとおよそ13億円と言われています。また愛犬イブについては、残念ながら野崎さんが妻と結婚してからすぐ後に死んだようです。
なお覚醒剤をめぐってはその入手経路などを含めて様々な報道がなされていますが、当コラムでも紹介したように警察の執念の捜査により自宅の掃除機(コードレス)の中から成分が検出されたことが元妻の逮捕へと結び付くきっかけになったようです。

 
このように元妻と田辺市、それに親族たち(兄弟)を巻き込んでの大きな相続問題になっているわけですが、元妻に関して言えば民法891条の規定により故意に被相続人を死亡させるなどして刑に処せられた者は「相続欠格」に該当するため相続はできないことになります。ただし現時点ではまだ裁判も始まっておらず、刑が確定するまでは何とも言えません。
したがって今後の焦点としては、遺言書が有効か無効かを争う訴訟と、元妻の容疑をめぐる起訴後の裁判の行方が注目されることになります。これら二つは共に関連していることから並行的に審理が進むものと予想されますが、事件の共犯者が現われたりした場合のことなどを考えると最終的な結論が出るまでにはまだかなりの日数がかかるものと思われます。もうしばらくはこの事件から目を離すことができないようです。

 

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【2021年4月】
高齢者のフレイル予防対策

 
大阪府や兵庫県などでようやく緊急事態宣言が解除されたと思ったのもつかの間、また新規感染者が急に増え続けたため、大阪市や阪神間の神戸市、西宮市、尼崎市などに「まん延防止等重点措置」いわゆる「まん防」が適用されることになりました。新型コロナウイルスとはまことに厄介な感染症です。とりわけ重症化しやすいと言われる基礎疾患のある人や高齢者は、要注意です。やはり一刻も早いワクチン接種によって集団免疫を獲得するしか、根本的な解決方法はなさそうです。
 
そうした中で最近よく言われるのは、コロナ禍による自粛生活が長引くと特に高齢者においてはフレイルが心配なことです。フレイルについては今から3年ほど前の2018年7月、このコラムで取り上げたことがあります。当時はまだあまり耳慣れない言葉で、はたして世の中に定着するのか疑問でしたが、今はよく耳にするようになりました。
その時はフレイルかどうかのチェックリストとして次の5つがあり、どれかにあてはまると注意が必要と言われていました。
1.半年前より体重が2、3キロ減った 2.以前より疲れやすくなった 3.出かけるのがおっくうになった 4.ペットボトルのふたを開けにくくなった 5.青信号の間に横断歩道を渡り切れなくなった
実際のところこれくらいはかなり多くの高齢者があてはまりそうな気がしますが、それから3年近く経ったコロナ禍の現在では、その心配はさらに強まっていると言えます。

 
空き家・空き地
フレイルとは簡単には「介護が必要な一歩手前の状態」を指す言葉で、具体的には筋力や運動機能が低下した身体的フレイルや、うつや物忘れ、軽い認知障害などの精神的フレイルがありますが、これらは相互に関連していると考えられます。
コロナ禍により外出したり運動する機会が減ることで身体機能が低下し、また人とのコミュニケーション機会が少なくなることで精神的なうつや認知機能が低下するといったようにフレイルの進行が加速されます。このフレイル状態すなわち「介護が必要な一歩手前の状態」で新型コロナに感染すると、重症化や死亡リスクも高まってしまいます。またいろいろな意味で生活の質(QOL)が低下し、正常な判断ができなくなったり社会活動に支障を来たすことになります。

 
相続に関して言えば、誰にどのように遺産を相続させるかという遺言書を書いたり、生前贈与などのさまざまな相続対策を行うことが困難になってしまいます。さらには自分の財産管理ができなくなり、成年後見人の選任が必要になったりもします。こうした事態を招かないためにも、高齢者の方は早めにしっかりとフレイル予防対策をとることをお勧めします。
その第一は、まず十分な栄養のある食事です。肉、魚、野菜、米など、各種の栄養素を含む食べ物をバランス良く摂りたいものです。次いで毎日の散歩や適度な運動によって、身体をよく動かすことが大切です。さらには感染防止に気を付けながら、知人やサークル仲間などとのコミュニケーション機会を増やし、脳や精神に刺激を与えることも重要となります。こうしたことを継続的に行えば、フレイルはかなり予防できるものと考えられます。
今のようなコロナ禍の時代だからこそ、こうしたフレイル予防対策にしっかり励むことで、健康で快適な長い老後の生活をぜひともエンジョイしたいものですね。

 

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【2021年3月】
相続登記が義務化されます

 
一昨年の12月に続き、土地や建物など不動産の相続登記(名義変更)についてふれてみたいと思います。と言いますのは先日法制審議会において、所有者不明の土地をこれ以上増やさないために相続や住所変更時の登記を義務付ける法改正を、法務大臣に答申したからです。近いうちに改正案がまとまり、国会で成立するものと見られます。
この改正の背景になっているのは空き家・空き地問題です。総務省の資料によると平成30年の空き家数は全国で846万戸あり、住宅に占める割合は13.6%に達しています。ここ数年その伸びはやや鈍化しているものの、依然として増え続けています。また土地についても、一筆ごとの地籍調査では所有者不明の割合はおよそ2割に上るとのことです。

 
その最も大きな原因としては、やはり少子高齢化があげられます。親の世代が高齢化により老人ホームや介護施設などに入居したり、あるいは亡くなったりして誰も住む者がいなくなると空き家になってしまいます。
こうした空き家・空き地は相続が発生した後も、これまでは特に期限が定められていなかったため相続登記されないケースがしばしば見られました。その結果、放置されたままの所有者不明の空き家・空き地が増え続け、各地で建物が崩壊する危険やゴミなどによる環境汚染、さらには景観上の問題などが起こっています。

 
空き家・空き地
そこでこのたびの答申では、土地を相続した人はその取得を知った日から3年以内に相続登記を申請することを義務付けました。理由なく怠った場合は、罰則として10万円以下の過料が定められました。また所有者が転居して住所変更した場合においても、2年以内の変更登記を義務付け、怠った時は5万円以下の過料が定められます。
こうした改正にともない、所有者を明確にするための新たな対策も設けられています。取得した土地を手放したい場合は、担保が設定されていないなど一定の要件のもとで10年分の管理費相当額を納付すれば、所有権を国に移転させることができます。また複数の人が共有する住宅地の私道などで一部の所有者が不明の場合、残る共有者の同意で私道の活用ができるようになります。

 
さらには所有者不明分の土地の相当額を、他の所有者が供託してそれを取得・売却できるなどの規定が設けられました。これにより相続において一部の相続人が不明の場合、他の相続人が供託してそれを取得・売却できることになります。また所有者が外国に居住している場合は、国内の連絡先を登記に記載する規定も設けられます。
このような法改正にともなうさまざまな対策により、国や自治体では空き家・空き地を少しでも減らそうと努力しています。相続が発生した場合は、すみやかに相続人に名義を変更する相続登記を済ませたいものです。そのため相続人が複数いる場合は、遺産分割協議などにもとづき誰がどのように不動産を取得するかを明確にする必要があります。共有するにしても分割するにしても、相続人同士の話し合いによりこの点をはっきりさせることが大切です。
これには税の問題も関係してきますので、専門家の知恵を借りて解決するのも一つの方法です。こうした問題でお悩みの方は、どうぞ当相談所にご遠慮なくご相談ください。

 

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【2021年2月】
「死因贈与」ってどんな意味?

 
先月は相続の「代襲」ということを取り上げましたが、今月も引き続き相続関係の耳慣れない言葉についてふれてみたいと思います。その一つが「死因贈与」という言葉です。
普通「死因」と聞けば何が原因で死んだのか、という意味だと思いますよね。するとそれと「贈与」とが結び付かず、えっ?となってしまいます。どうやら意味が異なる使い方をしているようです。ここでの「死因」は死亡原因ではなく、死亡の結果として発生することがらを指します。つまり死亡によって初めて効力が発生する「贈与」、という意味になります。そう言われるとそんな気もしますが、何だかわかりにくい日本語ですね。

 
そしてここでまた、ある疑問が起こります。それはよく似た言葉として「遺贈」というのがあり、それとどう違うのかということです。昨年3月の本コラムで相続と贈与の違いについて取り上げましたが、一般的に相続は死後に発生するものであるのに対し、贈与は生前に行われるものです。さらに相続は基本的に法定相続人を対象とするのに対し、贈与は相手を自由に選べると述べました。これはその通りなのですが、話が少しややこしくなるのは遺言による贈与すなわち「遺贈」という言葉もあることです。
そもそも相続とは、法定相続人に対して財産を移転させることであるため、それ以外の人に「相続させる」という言い方はしません。これに対し「遺贈」は、法定相続人に対してもそうでない人にも使用できます。ただし法定相続人に対して「遺贈する」と書いた場合は、ちょっとした問題が起こる可能性があります。例えば所有権移転の登記申請のさいに、他の法定相続人と共同で行う必要があることなどです。「相続させる」と書いた場合は、単独での申請が認められます。といったようなややこしい問題が、いろいろと関係してきます。

 
死因贈与
さて話を「死因贈与」に戻すと、遺言による贈与である「遺贈」とどんな違いがあるのでしょうか。その違いとしてあげられるのは、まず「遺贈」はその内容を受け取る人に事前に知らせる必要はありませんが、「死因贈与」は通常の贈与と同じように書面に内容を記入して両者が契約します。場合によっては口頭で約束して成立させることも可能ですが、一般的には契約として書面で残す方が望ましいと言えます。このことは逆に言えば、「遺贈」はあくまでも遺言者の意思を示しているだけでそれが死後に確実に実行されるという保証はありませんが、「死因贈与」は契約によってお互いにその実行を担保していることになります。
 
さらに「負担付死因贈与」と言いまして、相手に対して何らかの負担(義務)をしてもらうことを条件に死後贈与するという方法もあります。例えば生前に、自分の身の回りの世話や介護をしてもらうといったことです。なお「死因贈与」は「遺贈」と同じように後で撤回することは可能ですが、この「負担付死因贈与」の場合は特段の事情がない限り撤回できないとの判例もありますので注意が必要です。
また「死因贈与」の一つのデメリットとして、相続人が不動産を相続する場合は登録免許税として固定資産税評価額の4/1000で済みますが、「死因贈与」により受け取る場合は20/1000と5倍になります。また前者では不動産取得税がかかりませんが、後者では一律4%ほどが課税されます。このようなことも考慮しながら、それぞれの事情に合わせて最善の方法を選ぶのが望ましいと言えます。

 

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【2021年1月】
相続を代襲するとは?

 
新年になっても新型コロナはなかなか終息の気配を見せません。緊急事態宣言により、一刻も早く平穏な生活に戻ることを期待したいものです。さて今回は相続に関する言葉の中で、皆さんもあるいは耳にしたことがあるかと思いますが、「代襲相続」についてふれてみたいと思います。
民法などの法律用語には耳慣れないものが多く、この言葉などは語感からして難しそうで一瞬何のことかと考え込んでしまいます。「代」はよいとしても、「襲」の方は何やらいかめしい感じがします。この字は訓読みでは「かさねる」や「おそう」と読み、もともとは衣服を重ね合わせるという意味があります。「おそう」の方は受け継ぐという意味の「世襲」などの他に、「夜襲」など不意に攻め込むといった何やら怖い感じがする言葉もあります。

そしてこの「代襲相続」ですが、これは「世襲」と同じようにある者に代わって相続を受け継ぐという意味で、被相続人の子供または兄弟姉妹が相続の開始前に死亡などで相続権を失くした時に、その子供が代わって相続人になることを指します。その子供もまた死亡などで相続権を失くしている時は、さらにその子供が代襲相続人となります。同じ意味の言葉として「承祖相続」や「代位相続」というのもありますが、あまり使用されないので覚える必要はないでしょう。
 
代襲相続

ここで注意しておきたいことが、二つあります。一つは相続を放棄した者の子供は、代襲相続ができないことです。これは権利を放棄しているわけですから当然と言えますが、二つ目として被相続人の兄弟姉妹の代襲相続権は、その子供(被相続人の甥または姪)に限るということがあります。
これは兄弟姉妹には遺留分がないのと同じ理由で、法律的な言い方では「直系卑属が有する相続に対する期待を保護するため」とされています。すなわち直系卑属(被相続人の子供や孫など)は、相続財産への期待が被相続人の兄弟姉妹とその子供や孫たちよりはるかに大きいのだから、優先されるべきだということです。よく言われる「兄弟(姉妹)は他人の始まり」との諺は、ここにもある程度反映されています。
ここでまた「直系卑属」という難しい言葉が出てきましたね。何となく子供や孫のことを指すらしいとは思いますが、では「直系」とか「卑属」という言葉の正しい意味はおわかりでしょうか。これを理解するにはそれぞれ対になっている、直系⇔傍系、尊属⇔卑属を対比して覚えるとわかりやすいでしょう。

簡単に言うと、直系とは親子による縦の関係のことを指すのに対し、傍系とは兄弟姉妹による横の関係にからんだ者を指します。具体的には、直系は本人から見て父母、祖父母、曽祖父母や、子供、孫、曾孫などで、傍系とは自分の兄弟姉妹をはじめ大伯(叔)父、大伯(叔)母、伯(叔)父、伯(叔)母や、甥、姪、大甥(又甥)、大姪(又姪)などを指します。また尊属とは本人から見て上の父母、祖父母や伯(叔)父、伯(叔)母などで、卑属とは下の子供、孫や甥、姪などを指します。ですから「直系卑属」とは、つまり本人から見て縦(親子関係)の下の子供、孫、曾孫などを指し、それ以外の父母などの直系尊属や傍系の尊属、卑属は除かれます。
相続においては、配偶者は別格としてあくまでも「直系卑属」の子供や孫が兄弟姉妹の関係より優先されているわけですが、それにしても日本の法律用語はなかなか難しくて覚えるのに苦労しますね。

 

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