~毎月1回お届けする相続に関するエッセイ風コラム~

 

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【2019年】目次

(12月) 相続登記は早く確実に済ませたい
(11月) 相続税の申告は正しくきちんと
(10月) 紀州のドンファン相続問題のその後
(9月) 「姻族」は、相続人になれません
(8月) 祭祀やお墓に関するお話
(7月) 都市部での農地活用と相続について
(6月) 親から子や孫へ資産を移動する
(5月) 樹木希林さんに学ぶ相続対策
(4月) みなし相続財産としての生命保険
(3月) リバースモーゲージの相続活用
(2月) 自筆証書遺言の新しい制度
(1月) 非相続人の「特別寄与料」について
 
(2020年今月~1月) 目次
(2018年12月~1月) 目次

 

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【2019年12月】
相続登記は早く確実に済ませたい
 
昨年の今頃も取り上げましたが、今年もまた住宅や土地など不動産の相続登記のことについて触れてみたいと思います。
不動産の所有者が亡くなった時には、相続人がその所有権を相続するため名義書き換えが必要となります。これが相続登記と呼ばれるものですが、現在法制審議会において所有者が死亡した土地の相続人に対し登記を義務付けるとともに、さらに罰則を設ける方向でも協議が進められています。法務省では、来年秋にも関連する法改正案を国会に提出したい考えと伝えられています。
この問題に関しては、所有者不明の土地においては実際に使用している者を所有者とみなし、固定資産税を課税できるように法改正する動きも出ているようです。法律だけでなく税制面の対策も併せて実施することで、さらに効果を高めようという狙いです。


ご承知のようにわが国では全国的に空き家が増加しており、建物が経年劣化によって損壊したり、また防火や防犯面の危険が指摘されています。ゴミが捨てられるなど、衛生面や景観上の問題も起こっています。こうした空き家は土地も含めて相続登記されていないことが多く、所有者を特定できないケースが年々増えています。放置すれば危険なので自治体などが撤去しようとしても、それが障害となりできないこともしばしばです。
そのため以前から所有者の明確化が求められて来たのですが、相続登記はまだ義務化されておらず、罰則もないのが現状です。本来は義務化されるべきなのでしょうが、残念ながらそうではありませんでした。相続が発生しても、不動産については放置されてしまうことが多々ありました。これを変えようと登記の義務化や罰則の制定といった動きが出て来ているわけですが、この二つは実効性を高める上でも表裏一体の対策と言えましょう。

 

少子高齢化の進むわが国においては所有者不明の土地や空き家を減らすことは、資源の有効活用や環境保全の意味からもきわめて重要な課題です。近年は各地で空き家を活用したビジネスなども盛んになりつつありますが、そうした動きに呼応して国交省では空き家情報を一元的に集約し、全国どこでも簡単に検索できる「空き家バンク」の取り組みも進めています。これによって自治体やNPO法人、さらには民間のリフォーム事業者などが住宅を再建したり、あるいは地域の活性化を図るのに役立てられるようになります。

相続登記を行うに当たっては、被相続人や相続人の方々の戸籍謄本をはじめ、相続する物件の固定資産評価証明書、登記簿謄本など様々な書類が必要となります。法定相続以外の割合で相続する場合は遺産分割協議書、また遺言書がある場合は別の書類が必要になったりもしますので、手続きに関してはやはり専門の司法書士などにお任せする方が簡単で望ましいでしょう。
当相談所では相続登記を依頼される方には相続関係を証明する図を作成する『法定相続情報の無料取得サービス』を提供していますので、ぜひご活用いただいて早く確実に相続登記を行っていただきたいと思います。
 

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【2019年11月】
相続税の申告は正しくきちんと
 
11月に入り会社勤めの方は年末調整の用紙が回ってきて、扶養控除や配偶者控除さらには保険料控除の申告書といったものの記入に頭を悩ませているのではないでしょうか。年一度だけのことですが内容がなかなか覚えにくく、しかも細かな字で説明が一杯書いてあるので何がどうなっているのかわかりにくいですよね。
最近ある芸能人が税務調査で税の申告漏れを指摘され世間を騒がせていましたが、多くの人にとって税の問題は頭の痛いところです。そして不適切な処理をすると税務調査を受けたり、場合によっては延滞税や加算税などのペナルティを受けることにもなりかねません。

もちろん納税は勤労、教育と共に国民の三大義務ですからきちんと申告して納めるべきものではありますが、その計算や手続きは正しい知識がないと難しいことも確かです。
国税庁によると2018年の一年間で約9万件ほどの税務調査が行われ、その中で相続税に関するものが約1万件含まれています。これは7万件余りの所得税に比べると少ないようですが、もともと申告自体が少ないこともあり、税務調査を受ける割合で言えば10件に1件とかなり高くなっています。実際に申告漏れを指摘されるケースも多いようです。

 

具体的にどんな財産について指摘されているかと言うと、一番多いのが預貯金に関するものでおよそ1/3を占めています。次いで有価証券や土地・建物などの不動産がそれぞれ15%前後で続いています。預貯金については本来は被相続人(亡くなった人)名義で申告が必要なものを、相続人の口座を借用したいわゆる「名義預金」と呼ばれるものにして申告していないケースが多くなっています。また相続税の申告にあたっては相続が発生した時点での預貯金残高を記載する必要があるのに、亡くなってから多額のお金を引き出した後の残高を記載したケースなどが見られるようです。

そもそも相続税の申告はどのような場合に必要かと言うと、相続財産の合計額が基礎控除額である3,000万円+(相続人の数×600万円)、例えば妻と子供1人の場合は4,200万円以下であれば申告は不要です。ただしいろいろな特例を利用して控除額以下になっている場合は、本来は控除額を超えているため納税額が0円だったとしても申告は必要となります。例えば1億6千万円までなら税額が軽減できる配偶者控除を適用する場合でも、相続税の申告は必要なので注意してください。その期限は、相続の発生を知った日の翌日から10ヶ月以内となっています。

その他、税務調査においては単純な間違いとして、いろいろな条件がそろって初めて適用される特例なのにその条件がそろっていないとか、受取った生命保険金の申告(500万円×法定相続人の数という非課税枠を超えた部分)が漏れているなどのケースがあるようです。こうした事柄については、いずれもかなり正確な知識が求められることは言うまでもありません。
このように相続に関しては手続きや税の面で難しい問題が多いので、不安のある方はやはり専門家に相談するのが一番良いと思われます。
 

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【2019年10月】
紀州のドンファン相続問題のその後
 
昨年の今頃は大阪や神戸などの関西も台風騒ぎで大変でしたが、今年はそれほどの大きな被害はなさそうな気配です。油断は禁物とはいえ、このまま静かな秋を迎えたいものです。
さて昨年の9月に取り上げた「紀州のドンファンと遺留分」の話が、最近また少し動き出したようなのでその後の展開を追ってみたいと思います。
昨年5月に和歌山県田辺市で紀州のドンファンと呼ばれた野崎さんが自宅で急死し、その遺産は不動産や金融資産などを含めて50億円近いとも言われました。野崎さんには子供がおらず、結婚したばかりの若い妻がいます。体内から覚せい剤反応が出たというその死因を巡る疑惑もさることながら、5年ほど前に〈いごん〉と書かれた自筆証書遺言が見つかり、そこには〈全財産を田辺市にキフする〉との文言があったのです。

その後のいろいろな調べで、主な財産は土地、預貯金、有価証券、投資信託など合わせて26億円余りであることが判明。そこから未返済の貸付金などを差し引くと、約13億円が相続財産として残りました。それにしても大きな金額であることは間違いなく、ここから妻と地元田辺市、さらに野崎さんの兄弟姉妹を巻き込んだ相続騒ぎが始まったのです。
まず問題となるのは遺言書の存在です。それが有効かどうかによって、遺産の配分はまったく変わってきます。ですからそれぞれの事情により、遺言書への立場は大きく異なります。寄付される田辺市には遺言書を拒む理由はなく、また妻には何も書かれていなくとも遺留分を受け取る権利があります。この二者が遺言書を認める立場なのに対し、兄弟姉妹は遺留分の規定がないためそれを認めると何も受け取ることができません。

 

そこで兄が代表して、この8月に遺言書は無効であるとの申立書を提出して訴訟を起こしました。もし遺言書が無効だとすれば、遺産の相続は妻が3/4、兄弟姉妹が1/4となり、兄弟姉妹も一定額を受取ることができます。逆に有効だとすれば、妻は遺留分を主張すれば田辺市と1/2ずつ分け合うことになります。それなら妻は無効の方が取り分が多いのだから、兄弟姉妹と同じ立場で訴訟に参加すれば良いのではと思われがちです。
しかしそこがこの相続問題の難しいところで、実は妻と野崎さんの兄弟姉妹との関係はきわめて険悪で仲が悪いらしいのです。妻にしてみれば兄弟姉妹との遺産分割協議を行うことは何としても避けたく、たとえ取り分が少し減るとしても田辺市と1/2ずつ分け合う方がスムーズに早く受取れると考えているようです。

ことの真偽は定かではありませんが、野崎さんの兄は「弟は大の役人嫌いだったので田辺市に寄付するなど考えられない。また生前に遺産は愛犬のイブに渡したいと言っていたのに、遺言書で一言も触れていないのはおかしい」などと話しているようです。
このようにいろいろと複雑な人間模様が絡んでくると、いったい何が真実かわからなくなってきます。野崎さんの死因を巡る疑惑に加え、遺言書が有効か無効かの問題、そして地元自治体への全額寄付という異例の遺言内容、そこへさらに愛犬までが登場してくるとなると、これはもうまさに事実は小説よりも奇なりと言うしかないのでしょうか。いずれにしてもまだ当分は騒動が続きそうです。
 

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【2019年9月】
「姻族」は、相続人になれません
 
私たちはふだん何気なく「親族」という言葉を使っています。似たような言葉として親類、親戚、縁戚などもあります。これらは意味としてはあまり差はありませんが、解釈が人によって異ならないように、民法で意味をはっきり規定しているのは「親族」だけです。
それによれば「親族」とは、①「配偶者」 ②六親等以内の「血族」 ③三親等以内の「姻族」、の三つから成ります。

①の「配偶者」は言うまでもなく婚姻関係(入籍)により生ずるもので、そこから親子や兄弟姉妹などのさまざまな関係が発生します。
②の「血族」とはこうした親子や兄弟姉妹などから発生する自分と血縁関係にある人たちのことです。
③の「姻族」は婚姻により生まれた「配偶者」の方の血縁関係で、いわゆる義理の関係です。なお自分の「血族」の「配偶者」も「姻族」となります。
親等はその関係が近いか遠いかを数字であらわしたもので、父母や子は一親等、兄弟姉妹は間に親が入るので二親等、祖父母や孫も間に父母や子が入るので二親等、曽祖父母や曾孫、甥や姪などは三親等になります。
「姻族」も数え方は「血族」と同じで、三親等以内とは「配偶者」の父母、祖父母、曽祖父母、甥や姪などが該当します。「姻族」では範囲は狭いですが、「血族」の六親等以内はさらに範囲が広くなります。
このように「配偶者」及び「血族」と「姻族」の区分を把握し、親等の数え方を覚えることが民法の「親族」の意味を理解する上で大切と言えます。

 

相続においては、(法定)相続人になれるのは「配偶者」や「血族」だけです。相続順位も決められていますが、「配偶者」はそれとは無関係に常に相続人となり、第一順位が「血族」の子供です。「姻族」つまり義理の関係の人は、相続人にはなれないのです。
「配偶者」については入籍が条件となるため、婚姻(入籍)していない内縁関係や、未婚状態の人は「配偶者」とはなりません。ただし内縁関係や未婚の状態でも、生まれた子供は母子の場合はそのままで、父子の場合は父の認知により実子として「血族」になりますから、相続人になれます。認知されなければ父の相続人にはなれません。
また養子縁組をしている場合は、実の親子と同じように一親等の「血族」(法定)となります。ただし「配偶者」が再婚で連れ子がいる場合、その子は一親等の「親族」ですが「血族」ではなく「姻族」となります。したがって「配偶者」は相続人となりますが、連れ子は相続人にはなれません。
近年は、離婚や未婚の母といったケースが増えています。相続人になれると思っていても、「配偶者」や「血族」という条件に合っていなければ相続人になれません。こうしたことが“争族”の原因にもなります。
このような揉め事を避ける意味でも、被相続人は遺産を誰にどう相続させるか生前にきちんと遺言で明示しておきたいものです。勝手に相続人を指定することはできませんが、「姻族」や第三者に対して「○○に△△の財産を遺贈する」という遺言による贈与はできますので、それを活用すれば良いと思われます。
 

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【2019年8月】
祭祀やお墓に関するお話
 
お盆の季節である8月となりました。以前はお盆が来ると一年の半分が過ぎたような感じでしたが、今年は5月に13連休の大型GWがあったため、休暇のヤマ場が年2つになりました。ですから一年が3区分されてしまい、お盆が過ぎて8月が終わると残り4ヶ月となり、急に一年が短くなったような気がしそうです。
それはともかくとして、お盆と言えば祖先の供養やお墓参りということで、今回はそれらに関連した話をしてみたいと思います。

お墓を建てるには一般的に墓地代、墓石代、永代供養料など、それなりの費用がかかります。また仏壇などを作るにもお金が要ります。こうした祭祀に関わるものは、相続に際しては相続財産に含まれないことになっています。
民法では亡くなった人(被相続人)の財産は原則として相続人が受け継ぐと定めていますが、民法897条(祭祀に関する権利の承継)においては系譜(家系図など)や祭具(仏壇、神棚など)、墳墓(墓地や墓石など)は相続財産としておらず、「慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する」としています。この規定の考え方はわが国の「家」制度が関係しており、基本的には「家」の跡を継ぐ者が承継するということです。
ですから祭祀に関するものは相続財産ではなく、ちょっと特殊な遺産扱いということになります。この「家」の跡を継ぐ者は一昔前は長男と決まっていたのですが、現在ではかなりあいまいになっているため、場合によっては夫婦や親子、あるいは兄弟姉妹であらためて話し合いをする必要があるでしょう。

こうした「家」制度の問題と関連して、近年は“死後離婚”という言葉を目にした方も多いと思います。これは法律上の用語ではなく、マスメディアが作った造語と言われます。そもそも配偶者が死亡すると婚姻関係は終了するため、死後に離婚することはできませんし、ありえない話です。この言葉の意味するところは、多くは妻側が夫の死後にその姻族(婚姻によって生じた親族)と縁を切るために「姻族関係終了届」を提出することを指しています。
その理由としては義父母とは同居したくないとかその介護をするのはイヤといったことの他に、夫や義父母と同じお墓に入りたくないというのもあります。姻族関係を終了させたとしても、遺族年金の受給資格などはそのままですし、相続財産を引き継ぐこともできますので、こういうふうに割り切って関係を断つ妻も少なからずおられるようです。そこに至るまでにはいろんな事情があったと思われますが、どこか切ない気分にさせられます。
いずれにしても急速な核家族化と高齢化の進展によって、わが国の「家」制度や家族のあり方が大きく変化しているのは間違いありません。お盆はご先祖の供養やお墓参りをするため親族が集まるせっかくの機会ですから、こうしたいろいろな問題をお互いに忌憚なく話し合ってみるのも有意義なことかもしれません。
 

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【2019年7月】
都市部での農地活用と相続について
 
相続の対象になる不動産として、土地があります。土地には宅地や田、畑、山林、原野など種類を示す地目があり、田や畑は一般的に農地と呼ばれます。土地を所有していると固定資産税などがかかりますが、その税率は土地の持つ収益率によって決まるとされます。農地は宅地に比べ収益率が低いので税率も低く、宅地課税よりは農地課税の方がずいぶん安くなります。
わが国の農業は高齢化と後継者不足という大きな問題に直面していますが、農地は食糧生産だけでなく自然環境や景観の維持、さらには防災面などでもきわめて重要です。このように農地は特別な役割を持つものであるため、農地法という法律により勝手に宅地にしたり、逆に宅地を農地にしたりはできないことになっています。また他人に勝手に譲渡することもできず、所有権を移転する場合は農業委員会や知事などの許可を得ることが必要です。(ただし相続で農地を引き継ぐ場合は農業委員会への届け出は必要ですが許可は必要なく、名義の変更だけで済みます)
このように大きな役割を持つ農地ですが、特に都市部においてはその重要性により1990年に生産緑地法が改正(1992年開始)されています。そして農業を続けたい農家に対しては、それが市街化区域に存在していても生産緑地に指定することで農地課税のまま30年間維持できることになっています。さらに終身営農を条件として、相続税の納税が猶予される優遇措置もとられています。農地を相続しても農業を続ける限り相続税は支払わなくてもよいのです。これらの措置により、都市部の農家の多くが生産緑地の指定を受けています。

 

この生産緑地法が2022年に期限を迎えます。そのため市街化区域の農地の多くが一斉に宅地化されるのではないか、とのいわゆる2022年問題が以前から言われていました。それを防ぐため国は2017年に生産緑地法を改正し、「特定生産緑地制度」を設けて税の優遇措置を10年間延期しました。10年後に再指定すればさらに10年延期が可能です。農業を続ける限りは相続税の納税も猶予されます。対象面積が500平方㍍以上だったものを300平方㍍以上にし、より多くの農家が指定を受けられるようになっています。
それに加え2018年に都市農地貸借法を成立させ、自分で営農するだけでなく他の農家や農業事業者に貸し付けることも可能にしました。それだけでなく土地利用の緩和措置がとられ、農地に産直品の販売店を作ることや農家レストランといった農業に関連する飲食施設の建設も認められています。このようにして農地の多様な利用を図り、間接的に農業の振興を図るのが狙いです。
30年前に生産緑地の指定を受けている都市部の農地面積は約1万500ヘクタールで、東京ドームに換算すると2244個分と言われます。これだけの面積のうちいったいどれだけ宅地に転用されるのか心配でしたが、こうしたさまざまな措置のおかげで宅地に転用される農地は思ったよりも少ないと予想されています。
人口減少により空き家が増加している現在、特に都市部においては宅地をこれ以上増やすよりも景観や自然環境の維持に役立つ農地を増やす方が大切と考えられます。農家の高齢化や後継者不足といった問題はあるものの、このように税制や相続面などで優遇されている都市部の農地をできるだけ確保し、日本の農業を守り育てて行くことが望まれます。
 

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【2019年6月】
親から子や孫へ資産を移動する
 
言うまでもなく、今の日本は高齢化と少子化が大きな社会問題となっています。このままの状態が続けば高齢者の医療費や介護費などの社会保障費がますます膨らみ、それを支える若い世代の負担がさらに増大するのは間違いありません。しかしその若者たちが経済的な理由などから結婚しにくいのでは、少子化に歯止めをかけるのも難しいのが原状です。
そもそも親の世代は、高度成長とバブルの時代に企業の終身雇用や正社員制度によって守られそれなりの貯蓄ができました。それに対し子供の世代は、バブル後の就職氷河期の時代に非正規労働者として働き、貯蓄なども少なく奨学金の返済に苦しむ人さえいます。ここには、まさに想像以上に大きな世代間の富の格差が存在しています。
これでは若い世代が結婚して子供を育てるのもなかなか難しいと言わざるをえません。仮に結婚できたとしても、新しい生活にふさわしい住まいを確保したり、共働きのために子供を保育所に預けたり、さらには妊娠するために不妊治療を受けたりした場合には多大な経済的負担が必要となります。
この問題を少しでも解消するためには、現在きわめてアンバランスな状態となっている世代間の富の格差をできるだけ減らすことが求められます。そのためには親の世代から子や孫の世代に資産を移動することですが、相続が発生してから資産を移動してもそれではあまり役に立ちません。現在のような高齢化社会では、長生きして亡くなる頃には子供もすでに子育てを終えて高齢者の仲間入りをしているからです。ですから生前の早い段階から、相続対策として子供や孫へ資産を移動させておくことが大切です。

今年から相続法が改正されていくつかの新しい制度がスタートしていますが、こうした子や孫への資産移動に関しては以前から税制面でもそれを促進するための措置がとられています。一般的なものとしては、生前贈与に対しては年間110万円までは非課税です。一度に高額を手渡すのではなく、毎年少しずつ分けて贈与していくと非課税で相続財産を減らすことができます。
しかし少子化に歯止めをかけるためには、やはり目的のはっきりした結婚や子育て資金への優遇措置が有効でしょう。そのために設けられているのが、20~50歳の子供や孫に一回のみですが「結婚・子育て資金」として1000万円まで(結婚については300万円まで)非課税で贈与できる制度です。これは今年4月以降は所得1000万円以下に限定されましたが、2021年3月末まで2年間有効です。
結婚に関しては、婚礼費用はもちろん新居やその引っ越し費用なども対象となります。また子育てに関しては、妊娠や出産、不妊治療、子の医療費や育児費用などが対象です。ただしこの制度を利用するには金融機関にそのための資金口座を開設し、そこに一括贈与の資金を預け入れ、金融機関を通じて非課税申告書を提出することが必要です。
あと一つが、30歳未満の子や孫に「教育資金」として1500万円まで非課税で贈与できる制度です。こちらも所得1000万円以下に限定され、2021年3月末まで2年間有効で、金融機関に資金口座を開設して行います。学校などの教育機関に支払う入学金や授業料などが主な対象となります。
これらの相続対策としても有効な制度をうまく活用して、親から子や孫の世代に有意義に資産を移動させ少子化に少しでも歯止めをかけて行きたいものです。
 

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【2019年5月】
樹木希林さんに学ぶ相続対策
 
「令和」の時代に入りましたが、今月は平成の時代を生き抜いてその最後に亡くなられた芸能人から相続対策を学んでみたいと思います。普通の人に比べ相続額はやや大きいのですが、共通点は多いので参考になるはずです。
昨年9月に享年75歳でこの世を去った女優の樹木希林さんは、その半年ほど前にがんで余命宣告を受け、亡くなるまでの間に自身で葬儀や遺産相続の準備を済ませたそうです。
彼女は若い頃から芸能人には珍しく物を持たない生活にこだわり質素な暮しをしていましたが、不動産を購入することにはきわめて熱心で、亡くなる前には戸建て5軒、マンション3軒の計8軒、総額約10億円の不動産を所有していました。そして芸能人の知り合いなどにも、不動産を所有し賃貸物件として経営することを勧めていたそうです。芸能人はサラリーマンなどと違って老後の安定した生活保証がないため、家賃収入を年金代わりにするという考えがあったようです。
それに加え、不動産は例えば賃貸アパートなどを経営していると、貸付事業用宅地として200平米までは土地評価額が50%減額されます。ですから仮に5千万円の土地なら2千5百万円となって節税できますし、また賃貸契約はそのまま相続人が引き継ぐことができるなどのメリットもあります。

 

そんな彼女が亡くなり遺産相続をするにあたり、夫のロック歌手内田裕也さんには一軒の不動産も相続させませんでした。これには二つほど理由があり、一つはこの一次相続で配偶者に多額の不動産を相続させると1億6千万円の配偶者控除が適用できるため相続税は軽減されるが、その後に配偶者が亡くなった時の二次相続において子供たちに大きな負担がかかってくることです。特に高齢化が進む今日では、この二次相続まで含めて相続対策を考えておくことは大切でしょう。現実にも今年3月に内田裕也さんが亡くなっていますので、それを見越しての賢明な方法であったと言えます。
あと一つは、夫には名義変更や換金手続きなどが必要だったりする不動産ではなく、比較的自由に使える預貯金を遺すことで、生前に十分生活を楽しんでほしいとの配慮があったということです。きっと内田裕也さんも亡くなるまでの期間、その恩恵に大いに預かったのではないかと推測されます。
ちなみに樹木希林さんの相続人としては、夫の内田さんの他は娘の也哉子さんと婿養子の木本雅弘さん、孫の伽羅さんで、不動産関係は大部分がこの3人で相続したようです。娘に婿養子をもらうというのも、その意図は詳しくはわかりませんがあるいは相続問題を意識してのことなのかもしれませんね。
ともあれ樹木さんは生前にさまざまなことを考えて遺言をきちんとしたため、約10億円の不動産をはじめとする高額の遺産を相続人同士の間で何のトラブルもなく円満にすっきり相続させたのですから、その考え方や方法について私たちが学ぶべき点は多々あるように思います。葬儀も遺言にしたがって東京港区の光林寺で行われ、吉永小百合さん、宮沢りえさんら千五百人が参列して樹木さんとの別れを惜しんだとのことです。
どうぞ皆様も樹木希林さんの相続対策をご参考になさってください。
 

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【2019年4月】
みなし相続財産としての生命保険
 
新元号が「令和」に決まり、気分一新の4月となりました。今月は生命保険についての話です。
生命保険と言えばミステリーなどでよく保険金目当ての殺人事件に利用されますが、相続においては生命保険はみなし相続財産として位置付けられます。
それは生命保険というものがあらかじめ被相続人の固定した財産として存在するのではなく、当人が亡くなって初めて保険金として受取人(相続人)に支払われるためそう呼ばれています。
生命保険はもともと相互扶助を目的に、家計の担い手が亡くなった時に残された家族が安心して生活できるよう考えられたものです。ですから普通の預貯金などと違い、相続時には税制面で非課税枠の優遇措置があります。
これは死亡退職金にも同じように適用されますが、具体的には次の通りです。
◆500万円×法定相続人の数
例えば法定相続人が配偶者と子供二人の計三人の場合は、1500万円が非課税枠となり、それを超える部分が相続財産として課税対象となります。ですから預貯金などで所有しているよりも、税制面では有利となります。また生命保険ではそれまで払い込んだ掛け金(保険料)よりも死亡保険金が大きくなるのが通常ですから、その面でもお得ということになります。

 
生命保険

生命保険の内容は時代とともに変化し、現在では多様な商品が開発されていますが、基本的な種類は次の三つと言われます。
①掛け捨て型の期間限定の「定期保険」
②同じく期間限定だが貯蓄型の「養老保険」
③養老保険を一生涯保障にした「終身保険」
超高齢化時代の保険としては、途中で肝腎の保障が切れてしまう①②よりは③の終身保険が確実と言えます。ただ気を付けて頂きたいのは、これらをいろいろ組み合わせた商品が多いことです。
例えば名前は終身保険のようでも、大部分が掛け捨て型の定期保険だったりすることもあります。その場合は高齢になってからの保障がきわめて小さくなったりするので、気を付けなければなりません。
また為替で変動する外貨建て保険や運用成績で変動する変額保険などもありますので、相続にきちんと役立つ内容なのかどうかあらかじめよく確認することが大切と言えます。
生命保険の契約には、契約者(保険料を払う人)、被保険者、受取人の三者の指定が必要です。一般的には家計を支える本人(親)が契約者かつ被保険者となり、配偶者や子供を受取人とする契約形態が多いと言えます。ただし被保険者が本人でも契約者が本人以外だとみなし相続財産とならない場合もありますので、契約形態には注意が必要です。
生命保険が相続対策として優れている点は、保険金額が確定しておりしかも非課税枠があること、さらに保険金が分割可能な現金であるため相続時に代償分割しやすいことがあります。このような多くの利点のある生命保険を、ぜひ有効に活用していただきたいものです。
 

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【2019年3月】
リバースモーゲージの相続活用
 
最近リバースモーゲージの広告や記事をよく見かけるようになりました。これは一定の契約期間(20年など)を定め、自宅を担保にして銀行など金融機関からお金を借り、それを毎月または年金あるいは一括一時金で受け取ったり、さらには限度内でその都度必要額を引き出して行くなどのしくみのことです。
その用途については事業性のものは除かれ、個人の生活費や家屋のリフォーム、さらにはサービス付き高齢者住宅(サ高住)の入居資金などに利用する場合もあるようです。
通常のモーゲージ(=担保・抵当)ローンでは返済年月と共に借入残高が減って行くのに対し、逆に元本を返済しないので利息と共に増えて行く(リバース)ためそう呼ばれています(利息だけ返済して行くプランもあります)。最終的には自宅を手放す可能性が高いのですが、その契約期間内はそこに住み続けられるのが特長です。
住宅を所有しているが金融資産が乏しい、といった場合に利用されることが多いようです。わが国では住宅(家屋)の価値は年数が経つと評価が下がるので、マンションよりは土地付きの戸建てが主体となります。そして契約満期時または契約者が死亡するかのどちらか早い時に一括返済しなければなりません。契約者死亡の場合は相続人に返済義務が引き継がれます。
契約者や相続人に金融資産があればそれで返済できますが、ない場合は金融機関は抵当権を行使して担保物件を競売にかけそれに充当します。契約者が夫の場合は、その死亡後に妻があらためて契約すればそのまま自宅に住み続けられます。そして妻が死亡した時に、その相続人が返済することになります。

 
リバースモーゲージ

相続という観点でこのリバースモーゲージを考えると、例えば夫(被相続人)が死亡して所有財産が住宅だけの場合、相続人が複数いるとそれを売却すればその代金で遺産分割できますが、妻などがそこに住み続ける場合は売却しにくくなります。被相続人に金融資産があったり、妻が多額の生命保険の受取人になっていれば遺産分割の代償金を支払うことができますが、そうでない場合は困ってしまいます。
こうしたケースでリバースモーゲージを活用し、相続人である妻が契約者となって融資を受ければ(この場合は融資金の使い道が自由という条件付きで)、そこに住み続けたまま代償金を支払うことができます。それ以後の経済的負担もあまりありません。そして契約者である妻が亡くなった時や契約満期時に、あらためてその相続人が返済することになります。
住宅(不動産)は先祖から受け継いで子や孫に残すという考え方をする人は、現代ではあまり多くありません。住宅以外に潤沢な金融資産を持つ人は別として、そうでなければこのリバースモーゲージを活用して融資を受け、自宅に住み続けながら生活を楽しむというのもこれからの時代の有力な選択肢の一つかもしれません。
 

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【2019年2月】
自筆証書遺言の新しい制度
 
今月も引き続き相続法の改正に関係しますが、遺言書の新しい制度についてです。その中でも特に自筆証書遺言に関する次の2点を取り上げます。
①自筆証書遺言の方式緩和
②自筆証書遺言の保管制度の創設
その前に遺言についておさらいしますと、一般的に遺言の形式で多いのは自筆証書遺言と公正証書遺言の二つです。後者は公証役場で二人以上の証人立会いのもと公証人が作成するため手続きがやや面倒なのに対し、前者は所定の方式を満たす必要はあるものの文字通り自分で思ったままに書けます。
この自筆証書遺言は比較的簡単ですが、いくつかのデメリットがあります。せっかく所定の様式に従って書いても保管場所が不明になったり、他人に偽造や破棄されるおそれがないとは言えません。それと全文自筆が条件なので、パソコンなどで作成して印字したものは無効です。
ですから相続財産の目録については、例えば不動産物件の所在地を示したり預貯金や有価証券の記述などもすべて手書きで行わなければなりません。しかしこうしたものを高齢者がすべて手書きで行うと、ミスなども多くなりがちです。
そこで新しく、①自筆証書遺言の方式緩和が実施されることになりました。
これは自筆証書遺言書と一体のものとして財産目録を添付する場合は、パソコンなどの文書作成ソフトを使用して印字したり、あるいは預貯金などは通帳コピーを別紙として添付し、それらに署名押印することも認められるようになりました。今年の1月から実施されていますが、これによりすべて手書きで行うのに比べ、より容易かつ正確に自筆証書遺言書が作成できると思われます。

 
遺言改正

もう一つの改正ポイントは、②自筆証書遺言の保管制度の創設です。
これは自筆証書遺言のデメリットである保管場所が不明になったり、偽造や破棄される心配を解消するためのもので、法務局において保管できる制度が設けられました。こうすれば自宅保管に比べ、安心確実に保管できます。
さらにこの方法の場合、法務局がある程度様式のチェックをしてくれます。そして原本保管と共にこれを画像情報として保存しますので、相続人などからの請求に応じて遺言内容の確認や預かっていることの証明書を発行したりしてくれます。自筆証書遺言書では相続人の死後に家庭裁判所で「検認」という方法が必要でしたが、それが不要なので手続きがよりスムーズになります。
こう見てくると良いことずくめのようですが、しかし法務局では遺言書の様式はチェックしますが、その内容面についての審査や確認をしてくれるわけではありません。したがってせっかく遺言書を残しても、内容によっては一部の相続人の遺留分を侵害していたり、相続人同士の間にもめ事が起こる可能性もあります。ですからそういった点をご心配の方は、やはり司法書士である私たちのような専門家と十分に相談して作成するのが良いと思われます。
 

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【2019年1月】
非相続人の「特別寄与料」について
 
いよいよ改元の年を迎えました。今年は大きな地震や台風、豪雨災害などのない平穏な一年であることを祈りたいものです。
さて昨年は40年ぶりに相続法が改正され、今年から新しい制度が始まります。この欄でも「配偶者居住権」のことや、先月は「相続された預貯金債券の仮払い制度」などを取り上げてきました。今回はもう一つ新たに設けられた「特別寄与料」の請求制度について触れてみたいと思います。
これは簡単に言いますと、相続人以外で被相続人の生活や財産の維持などに関して特別な寄与や功労のあった人に対しては、その分を金額に換算して認めてあげようという制度です。
ですからまず確認していただきたいのは、相続人であるかどうかという点です。具体的な例としては、一般的に親が亡くなった場合に子供は相続人となりますが、その配偶者は親族ではあっても相続人ではないので、遺産を受け取る権利はありません。子供の配偶者が一生懸命に介護をしていたとしても、そもそも相続権がないので何ももらえないのです。

 
介護

近年高齢者の介護は大きな社会問題となっており、こうしたケースで義父母などの介護に多大な尽力をしていても、法定相続人ではないとの理由で何の対価も認められないのはやはり不合理と言わざるをえないでしょう。
そこで今回の改正では「特別寄与料」として、子供の配偶者などがそれまでの介護に費やした労務や時間に応じて相当する金額を請求できるようになりました。請求する相手は、被相続人の遺産を引き継ぐ相続人に対してということになります。
制度の趣旨はこのようなものですが、現実的にはその請求金額をどう計算するかといった問題が残っています。詳しい計算方法などはまだ公表されていませんが、考えられるのは一般的な介護職員が受け取る時間給の額に介護に費やした時間を掛け合わせるなどの案が検討されているようです。
しかしまだ曖昧な点もありますので、少なくともこうした状況に置かれていると思われる方は、介護日誌をつけるなどして記録として残しておくことをおすすめいたします。
なおこの寄与料の金額について相続人との間で合意ができない場合は、家庭裁判所に申し立てをすることができます。こうした問題を起こさないためにも、生前にこのような立場で尽力している非相続人がおられる場合は「特別寄与料」を遺言で言及しておくことが望ましいと言えます。
 

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