~毎月1回お届けする相続に関する楽しいイラスト付きエッセイ風コラム~

 

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目次
(2024年11月) 「名義預金」と「定期贈与」
(2024年10月) 「家族葬」とお墓の形の変化
(2024年9月) 「熟年」離婚と「円満」離婚
(2024年8月) 美術品や骨董品の価値評価
(2024年7月) 紀州のドンファン続報、遺言書は有効
(2024年6月) 紀州のドンファン元妻に詐欺容疑
(2024年5月) 共同親権への扉が開かれる
(2024年4月) 遺留分の侵害とは?
(2024年3月) 「遺贈寄付」が増えています
(2024年2月) 世代の移り変わりと「Z世代」
(2024年1月) 遺言書のデジタル化の動き
(2023年12月) 相続登記をお急ぎください
 
(2023年12月~1月) 目次
(2022年12月~1月) 目次
(2021年12月~1月) 目次
(2020年12月~1月) 目次
(2019年12月~1月) 目次
(2018年12月~1月) 目次
 

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【2024年11月】
「名義預金」と「定期贈与」
 
今回は「名義預金」と「定期贈与」の話をしてみたいと思います。この二つは贈与に関係する言葉ですが、実はどちらも税務上は大いに問題があることとされます。そこでまず贈与について、簡単におさらいをしておきます。
贈与とは自分の財産を無償で誰かに与える意思を表示し、相手がそれを受託することで成り立つものです。その約束は口頭でも書面でも良いのですが、お互いの意思を明確にするため贈与契約書を作成しておくのが望ましいとされます。

この贈与には生前贈与と死後の贈与の二つがあり、一般的には生前贈与を指しますが、死後に行われることもあります。死後の贈与は、さらに「死因贈与」と「遺贈(いぞう)」の二つに分かれます。その違いについてはこのプログで取り上げたこともあります(2021年2月)。簡単に言うと「死因贈与」は死亡により財産を指定した人に贈与する契約をあらかじめ結んで実行するのに対し、「遺贈」は遺言によって指定した人に財産を贈与するものですが相手との契約(合意)はありません。このように「遺贈」を除いては、贈与にはお互いの意思表示のための契約(合意)が必要となります。

名義預金

 
話を「名義預金」に戻しますと、これは口座の名義人と実際にお金を出した人が異なる預金を指します。例えば祖父母がお孫さんのためにその名前で勝手に預金通帳を作ってお金を積み立て、いつのまにか一千万円を超えたなどです。
しかし相続が発生した場合には、これは生前贈与によるお孫さんの財産とは見なされず、祖父母の相続財産として扱われ課税対象となることが多いのです。名義はお孫さんの名前ですが、実質は祖父母の財産と判断されてしまいます。
これを避けるためには、生前贈与としての客観的な証拠を残すことが求められます。

もう一つの「定期贈与」というのも、あまり耳慣れない言葉です。年間110万円までは贈与の課税対象にならないことはよく知られていますが、それはあくまでも個別的な贈与の場合です。
例えば1,100万円の財産を毎年110万円ずつ分けて10年間定期的に贈与を実行した場合は、まとめて1,100万円の贈与をしたと見なされる恐れがあります。これが「定期贈与」と呼ばれるもので、毎年の個別的な贈与とは異なると判断されることがあります。こうした場合は、毎年贈与の時期や金額を変える方が望ましいと言えるようです。
何だかすっきりしないと思われるかもしれませんが、税務においてはよくある話ですので注意が必要です。

 

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【2024年10月】
「家族葬」とお墓の形の変化
 
少子高齢化とともに、わが国の葬儀の形も近年大きく変化しつつあります。ある研究所が昨年50~79歳の男女2,000人を対象に行った『終活に関する意識調査』によると、自分の葬式は「家族葬」でと答えた男性は50.3%、女性が50.1%、また「一般葬」は男性7.6%、女性3.5%で男性が多く、逆に「一日葬」「直葬」は男性より女性の方が多くなっています。さらに「お葬式はしない」(まだ決めていない人も含む)が全体で24.9%との結果でした。
このように家族葬が急速に増えつつあり、男女ともにほぼ半数となっています。(「家族葬」については2021年11月のコラムにも掲載)

「家族葬」とは家族や故人と親しかった方の少人数で行うものを指しますが、明確な定義があるわけではありません。式自体は一般葬とほぼ同じで、お通夜と翌日の葬儀・告別式という流れになります。
ただし少人数で行うため、家族や参列者の思いをより反映させやすいという特徴があります。その形式をどのようにするか、また故人と関係のあった方のどの範囲までお招きするかなども自由に決めることができます。費用も比較的安価に抑えることができるため、時代の流れに沿った葬儀と言えるようです。

 

お墓の形の変化

 
このような葬儀の変化とともにお墓の形も、大きく変わってきています。かってはお墓と言えばいわゆる和型のお墓を指し、お盆になれば故郷に帰ってお墓参りをするのが一般的でした。しかし葬儀と同じくお墓も多様化し、日本古来の風習もしだいに変化しつつあります。
最近の別の調査によれば購入したお墓の種類では「樹木葬」が48.2%で、約半数を占めました。これは何も残さず自然に帰りたいという断捨離の感覚と共通するようで、お墓も承継者不要のものを希望する人が増えてきています。

またお墓に納めた遺骨を他のお墓や納骨堂に移す「改葬」や(厚生労働省の調査では2022年度全国で15万件以上)、墓石を撤去する「墓じまい」も増えています。特に高齢者は自分たちが苦労してきた分、子や孫にはお墓のことで苦労させたくないと考えているようです。近年、地震や水害でお墓が流されたり壊れたりしていることも影響しているようです。
その他に「海洋葬」「山葬」(散骨)といった選択肢も広がっています。さらにお墓の形も従来の和型ではなく、1平方㍍以下の小型墓が増えています。それとともに仏壇も小型化していて、小さなスタイリッシュな仏壇や、遺骨や遺灰の一部をペンダントやアクセサリーに納める「手元供養」、またガラス製位牌などの新しい形も登場してきています。

 

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【2024年9月】
「熟年」離婚と「円満」離婚
 
厚生労働省の発表によると2023年のわが国の離婚件数は速報値で約18万7800組で、2022年よりも4700組(2.6%)増え、5年前の2019年以来の増加に転じました。
離婚件数は2002年の約29万組をピークに減少傾向が続き、過去5年をみると新型コロナの感染が拡大した2020年は約19万3200組で前年より1万5200組減少、その後も減り続けていましたが昨年増加に転じました。
その背景には夫婦のあり方についての価値観変化や女性の経済的自立があるとされます。婚姻件数に対する離婚件数の割合は、ここ10年ほど見るとおよそ35%に達しています。

2022年に離婚した夫婦のうち、同居期間20年以上の「熟年離婚」は約3万9000組(23.5%)で、前年から0.8ポイント上昇。統計のある1947年以降で最高となり、4万組前後で高止まりしています。高齢化により夫婦の老後が長くなったことで、人生を再設計するケースが増えたことが背景にあるようです。同居期間の内訳は、20年~25年未満が約1万6400組、25年~30年未満が約1万800組、30年~35年未満が約5200組、35年以上が約6600組となっています。

熟年離婚の比率が高まっている理由としては、以前に比べ男性の平均寿命が81歳まで延び、夫の定年後に夫婦で過ごす時間が長くなり、性格の不一致などで新しい人生を歩もうとするケースが目立っているようです。また最近はその前段階で夫が管理職から外される「役職定年」で収入が減少し、夫婦間に亀裂が生じて離婚に至るケースも多いとされます。

熟年離婚

この離婚ですが、実は3月の届け出が最も多くなっています。昨年の場合、他の月は1万5千組程度なのに対し3月は2万組を超えています。過去のデータでもこの傾向は続いています。やはり3月は子供の進学や就職、さらには経済力をつけるための転職など、新年度に向けて区切りをつける人が多いためと思われます。
その3月直前の2月29日は「2人に福(29)あれ」から「円満離婚の日」とされていて、離婚を前向きに考え、新たな門出とし「離婚式」をする人もいるようです。

結婚式の「新郎・新婦」に対し、離婚式では「旧郎・旧婦」。離婚をネガティブに考えるのではなく、離婚に至った理由と向き合うことで、新たな自分たちの成長の機会とすることを目的とします。他人には言いにくい離婚原因を親戚や友人にオープンにすることで、離婚後も良い関係を保ち、引き続き協力して子どもを育てることなどを参列者の前で誓うそうです。
費用は10万円から20万円ほどで「未練を断ち切りたい」男性から提案することが多いようですが、結婚も離婚も自分たちの未来のためですから、ぜひ前向きにとらえて次の新しいステージに進んでもらいたいものです。

 

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【2024年8月】
美術品や骨董品の価値評価
 
親が大切にしてきた相続財産は、できればきちんと受け継ぎたいものです。しかし実際には受け継ぐ側にとって悩みやトラブルの種になったり、取扱いに困るものもあるようです。相続財産にどのようなものがあるかについては、最近のあるインターネット調査によれば「現金」が最も多く75.8%、次いで「不動産」60.5%、「家財道具」25.8%と続きますが、それ以外に約2割の方が「美術品(骨董品含む)」と答えています。
さらに相続の前に処分しておいてほしいものを訊ねたところ「家財道具」が42.9%で最も多く、次いで「不動産」26.3%、「美術品(骨董品含む)」24.2%の順でした。(相続の経験がある40代以上の男女対象:いずれも複数回答)

このように必ずしも相続財産をすべて不満なく受け入れているわけではなく、事前に処分してほしいものもかなりの割合で存在します。その理由としては「面倒だから」が57.8%で最も多く、「使用予定がない」26.6%、「管理などの経済的負担」20.2%と続きます。
相続財産としては「現金」(預貯金や有価証券など)、「不動産」(家屋や土地など)、「家財道具」(家具や調度品など)の三つが主なものですが、その他に取扱いの難しいものとして「美術品」や「骨董品」があります。これらは将来的に価値上昇の可能性がある一方で、客観的評価や管理方法が難しいという問題を抱えています。

筆跡鑑定

 
「美術品」や「骨董品」の客観的評価という点で有名なテレビ番組が、テレビ東京系列で1994年から30年の長きにわたり放映されている「開運!なんでも鑑定団」です。各地で鑑定・骨董品ブームを巻き起こし、今では出張鑑定も行っているほどです。
番組ではまず依頼人の登場から始まり、次いで依頼品の見方や歴史的背景、さらには製作した人物の経歴や作風などが逐一解説されます。そして最後に鑑定結果に一喜一憂する依頼人の表情が映し出されるという設定で、単なる依頼品の価値評価だけに終わらないユニークな番組となっています。

番組からもわかるようにこの「骨董品」(アンティーク)という言葉には、古くて大事なものの他に古いだけで役立たないガラクタの意味があり、また「美術品」にも価値のない贋作が多数存在します。そうした不確かさが相続を敬遠させる理由にもなっているようです。
これらの「美術品」や「骨董品」の相続に当っては、事前にそれらの価値を正しく評価しておくことが大切と言えます。そうすれば遺産分割も比較的容易に行うことができますし、トラブルの防止にも役立ちます。最近はそれらを買い取ってくれる専門店も多くなっていますから、そうした店に依頼して適正価格で引き取ってもらうのも有力な方法と言えます。

 

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【2024年7月】
紀州のドンファン続報、遺言書は有効
 
先月に続き、再び紀州のドンファン事件を取り上げます。元妻である須藤被告が覚せい剤により野崎さんを殺害したのではないかと起訴されている裁判がなかなか進まない中、もう一つの大きな争点となっていた遺言書に関して、和歌山地裁が先月21日有効との判決を下しました。
この遺言は野崎さんが元妻と会う前の平成25年の日付で、コピー用紙1枚に赤ペンで「いごん 個人の全財産を田辺市にキフする」と書かれたものです。それをめぐって親族(兄たち)4人が無効との訴えを起こしていました。
訴えの理由として「大の役人嫌いだった弟が田辺市に寄贈するなど考えられない」や、コピー用紙に赤ペンで手書きしたもので保管場所も不自然、さらに筆跡が別人だとして鑑定書を地裁に提出。「野崎」の「崎」の字が極端に長く続け書きされていて、生前に書いた「崎」と比較すると形状や書き方が異なる。また他の字の書き順や癖も異なり、透写により偽造された可能性が高いなどと指摘しました。

これに対し田辺市も生前の本人の自筆とされる督促状の署名や手紙、また公正証書などを提出して本人の筆跡を立証しようとしました。さらに「野崎さんは生前に複数回にわたり、計1200万円の財産を市に寄付していた」と遺言の正当性を主張しました。
その結果として、判決では原告側が提出した筆跡鑑定書には不合理な点があると指摘。 また野崎さんは生前、地元田辺市の発展を望むと発言していたことや、周囲に兄弟との関係が良くないため財産を譲りたくないと話していたことなどから、最終的に遺言書は野崎さんのものと結論付けました。

 

筆跡鑑定

 
 
親族側の代理人弁護士は「判決文には内容や理由付けに不合理と思われるところが多くある」として控訴も検討すると話していることから、裁判はまだ続く可能性もあり予断を許さないところです。しかし仮に遺言書が偽造されたものとした場合は、では田辺市への遺贈によって誰が得をするのか考えると、現実的にはそのことで利益を得る関係者はおらず偽造の可能性は少ないように思われます。
遺言書が無効の場合は法定相続により配偶者が3/4、兄弟が1/4の割合ですが、有効の場合は配偶者は遺留分として3/8(3/4×1/2)受け取れます。したがって元妻には利益はありますが、彼女は野崎さんへの殺人罪で起訴されており有罪が確定すると相続権を失ってしまいます。

この遺言書は野崎さんが生前に経営していた会社関係の男性に平成25年に預けていたものであり、当時はまだ元妻と会う前だったことを考えると、彼女が偽造したと考えるには無理があります。
遺言書を預かっていた男性は、野崎さんから「まだまだ死ぬつもりはないが、万一の時には自分の財産を郷里の発展のため役立ててもらいたい」と電話があったとも証言しています。そのようなことを総合的に考えると、やはりいくらコピー用紙一枚に「いごん」とボールペンで書かれたものだとしても、それが偽造されたとするには根拠が乏しく、裁判所の有効との判断はきわめて妥当なものと言えるようです。

 

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【2024年6月】
紀州のドンファン元妻に詐欺容疑
 
このコラムで2018年以来毎年のように取り上げてきたのが、紀州のドンファン事件です。6年前に和歌山県田辺市で77歳男性の野崎さんが自宅で急死し、体内から覚せい剤が検出されました。その約13億円の遺産をめぐって、遺言書が有効か無効かの争いや、事件3ヶ月前に結婚した50も年下の元妻が2021年に逮捕され、大きな話題となりました。
遺言書については事件後「いごん」と書かれた自筆証書遺言が見つかり、遺産の全てを出身地田辺市に遺贈すると記されていました。野崎さんには子供はいませんでしたが、元妻や親族である4人の兄の名前はなく、兄たちは遺言書が無効との訴えを起こします。理由として「大の役人嫌いだった弟が田辺市に寄贈するなど考えられない」や、遺言書に日付や署名捺印はあるがコピー用紙1枚に赤ペンで手書きしたもので、保管や発見状況も不自然だと無効を主張しました。

さらに2021年筆跡が別人との3件の鑑定書を地裁に提出。一つは「多くの字で形状が異なり、別人の筆跡と判定」、あと一つは「書き順や癖が異なり、高齢者に特有の震えやゆがみがない」と指摘。これに対し田辺市は生前の手紙や公正証書などを提出し、本人の筆跡を立証しようとしています。
元妻は遺言書に記載がなくても最低限保障の遺留分がありますが、兄弟姉妹にはありません。遺言書通りなら彼女は遺産を田辺市と分けて遺留分3/8(3/4×1/2)を受け取れますが、兄たちにはありません。遺言書が無効なら元妻は3/4、残り1/4は兄たちとなりますが、彼女は兄たちとの遺産分割協議を避け、取り分が減っても田辺市と分け合って遺留分を受け取る方が良いと考えたのでしょう。

 

元妻詐欺容疑

 
この遺言書とともに重要な問題が、元妻である須藤早貴の裁判の行方です。死因の覚醒剤については、当コラムでも紹介したように掃除機から成分が検出されたことが逮捕に結び付いています。その後、殺害方法をスマホで調べていたこともわかり、疑いはますます深まりました。しかし未だに覚醒剤をどういう方法で飲ませたのか明らかでなく、また押収したビール瓶からも覚醒剤が検出されなかったなどの理由により、公判の見通しは立っていません。

そんな中、元妻は別の男性への詐欺罪でも起訴されていて、5月に初公判が行われました。この事件は野崎さんに対する殺人事件の捜査の過程で発覚したもので、2016年札幌市内の61歳男性から海外留学の準備金名目で約3,000万円をだまし取った罪に問われています。当時19歳だった彼女は起訴内容について「確かにウソをつき金を受け取ったが、男性もウソと知りながら私の体をもてあそぶために金を払った」と主張。弁護側は「被害男性はホステスだった須藤被告のことを心理的に支配したいために金を支払った」として、争う姿勢を示しています。
紀州のドンファン事件としてこのように忘れかけた頃に次々と話題にはなりますが、肝心の野崎さん殺害事件の真相にたどり着く日ははたして来るのでしょうか。

 

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【2024年5月】
共同親権への扉が開かれる
 
以前も何回か取り上げていますが、最近共同親権に関する話題が二つありましたので、それについてふれてみたいと思います。一つは元五輪卓球選手の福原愛さんが3月に都内で記者会見し、4歳の長男の親権を巡って元夫の台湾の江宏傑氏との間に和解が成立したことを発表しました。
福原さんは2016年に江氏と結婚し長女と長男が生まれましたが、21年に離婚。その長男を一昨年の夏休みに日本に連れ帰り、連絡がつかなくなっていると江氏が訴えを起こし、その後東京家庭裁判所から福原さんに長男を引き渡すよう保全命令が出されていました。

台湾では離婚後は共同親権なのでお互いに子供とは平等に接することができ、夏休み中は福原さんが二人の子供を預かる約束になっていたようですが、なぜか空港で江氏が突然反対し、長男だけ連れ帰ったとも言われています。その後も双方の弁護士が会見や声明を出すなど、対立が続いていました。
日本では離婚後は夫婦どちらかの単独親権ですが、台湾やヨーロッパなど諸外国では共同親権が一般的です。共同親権には、離婚時に親権争いが起きないこと、離婚後も子供が父母と交流ができ養育費の不払いが比較的少ないこと、教育について父母と子供が一緒に話し合えることなど多くのメリットがあります。その一方で、福原さんのように父母の間で意見の相違があると揉めてしまい、子供が板挟みになって苦しむなどのデメリットもあるとされます。

共同親権の親子

 
1996年のハーグ条約で、国境を越えて子供の連れ去りが起きた場合は原則として元の居住国へ迅速に返還することが定められていますが、単独親権のわが国では適用されないため国際結婚などで離婚した後に日本へ子供を連れ帰ってしまうトラブルが起きていました。こうした問題もあって、共同親権導入の法改正が多くの議論を踏まえながらこれまで進められてきました。
その結果先月16日に、もう一つの話題である共同親権についての民法改正案が衆院本会議で可決されました。成立すれば2026年までに施行されることになります。

 
この改正案では懸念されているいくつかの問題について、まず夫婦で合意に至らなかったり裁判を経て離婚する場合には、家庭裁判所が共同親権にするか父母どちらかの単独親権にするかを判断することになりました。また離婚後の共同親権によって、父母の一方による家庭内暴力(DV)や虐待が離婚後も続きかねないとの不安や危惧については、そうしたおそれがある場合は家庭裁判所がどちらかを単独親権者とすることを明記しました。
このように、わが国においてもようやく共同親権への新たな扉が開かれました。これは今後も増え続けると予想される離婚後の子供を巡る不安やトラブルの解決に、一つの光明を与えるきっかけになりそうです。しかし運用面ではまだ多くの課題がありそうで、いろいろなケースについての十分な議論が望まれるところです。

 

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【2024年4月】
遺留分の侵害とは?
 
先月は遺贈による寄付の話をしました。そこでもちょっと触れましたが、相続人への遺言作成や第三者への遺贈(遺言による贈与)を行う場合に注意しなければならないのが遺留分という問題です。
これは通常の相続においては、法定相続人であれば最低でも法定相続割合の半分(直系尊属のみが相続人の場合は三分の一)の遺産を受け取る権利があり、それを遺留分と呼んでいます。残された相続人の生活保障といった意味あいもあるようですが、遺言や遺贈により受取る額がその遺留分を下回る場合は遺留分が侵害されたことになります。

 
このような場合は、侵害された相続人はそれを不服として家庭裁判所に「遺留分侵害額請求調停」の申し立てを行うことができます。(ただしこれはあくまでも権利であって、放棄することももちろん可能です)
このようなことが起きないように、遺言や遺贈を考える場合は特別な事情がない限りあらかじめ相続人の遺留分に配慮し、それを侵害しない範囲で遺言や遺贈のプランを立てることが望ましいと言えます。そのためにはやはり遺産となる財産の全体像や、誰が相続人なのかをきちんと把握しておくことが大切なのは言うまでもありませんが。

遺留分侵害

 
とは言え相続人が複数いたりあるいは財産を贈与したい第三者がいる場合などは、感情的な問題やいろいろな事情が絡んで、特定の人を極端に優遇した遺言や遺贈をすることもないとは言えません。例えば姉妹が複数いるのに「長女に全財産を相続させる」と遺言するなどです。すると後で次女などから遺留分が侵害されたとして「争族」になるおそれがあります。
そうならないように、遺言作成時には各相続人の遺留分や受取人の適切な遺産配分などに十分留意することが重要と言えます。

 
そもそもこのように相続人や贈与したい第三者などが複数いる場合は、被相続人と相続人あるいは第三者との関係だけでなく、その人たち同士の思いや関係も複雑になってきます。特に金銭だけでなく不動産が関係してくると、一筋縄では行かないことが多くなります。たとえ親子や兄弟姉妹、親族と言えども、よほどの信頼関係がないとトラブルがつきものです。それは遺産額の大きさによらず、むしろ少ない方が分配が難しくなるとの説もあります。
なお遺留分侵害の請求権は、相続の開始と遺留分の侵害があったことを知った日から一年以内に請求しないと権利が消滅してしまいますので注意が必要です。

 

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【2024年3月】
「遺贈寄付」が増えています
 
年明けに能登半島地震で大きな被害があったことも影響してか、先日のNHK「クローズアップ現代」で自分の財産を「遺贈寄付(いぞうきふ)」する人が増えている話をしていました。「遺贈寄付」とは、「遺贈」すなわち遺言による贈与によって寄付するという意味ですが、その総額は年間400億円近くに上るそうです。
背景としては団塊世代の高齢化などにより一人世帯や子供のいない夫婦だけの世帯が増え、必ずしも遺産を家族に残さなくてもよいとの考え方が浸透してきていることがあげられます。

一般的な「遺贈」は自分の相続財産を第三者に贈与することですが、「遺贈寄付」は社会貢献活動に寄与することを目的として公益法人やNPO法人、学校法人や国立大学法人などへ相続財産を譲渡することを意味します。これによってその団体の活動を支え、社会的な課題が解決されるようにしていくものです。
欧米では人生最後の社会貢献として古くからよく利用されていますが、日本でも新たな寄付の方法として最近注目され始めています。地域社会や将来を担う子供たちのために役立てたいなど、寄付を行う理由はさまざまとなっています。

 

遺贈寄付

 
遺言がなければ遺産は法定相続人に相続されますが、相続人が誰もいない場合は国庫に入ることになります。しかしこのような「遺贈寄付」にすれば、死後に財産の行き先を自分の意思で決めることができます。
「遺贈寄付」の主な方法としては、生前に財産の全部または一部を寄付することを遺言で残しておくのが代表的ですが、「死因贈与」契約により死亡後に寄付する契約を締結しておく方法もあります。また生命保険に加入し、死亡保険金の受取人として公益法人などを指定したり、あるいは同じように財産の全部または一部を公益法人などに寄付する信託契約を信託の受託者と締結する方法もあります。
 
なお相続人がいる場合は、一部を相続人に相続し、残りを「遺言贈与」とすることもあります。この場合は相続人の心情に十分配慮した遺産配分をすることが求められます。相続人の「遺留分」を侵害しないようにすることはもちろん、生前の関係や心情などを考慮して不満のない配分を行うことが大切です。
また死後に相続人が「遺贈寄付」のことを初めて知ったりすることのないように、生前のうちに「遺贈寄付」を行う意思をしっかり伝えておくことも必要でしょう。

 

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【2024年2月】
世代の移り変わりと「Z世代」
 
最近は遺言書だけでなく、全てのことで何かとデジタル化が強調されています。ついこの間まではITと言っていたような気がするのですが、今ではDX(デジタルトランスフォーメーション)と呼ばれ、政府や自治体でも盛んに使われています。それに伴って私たちの生活も変わらざるをえないようですが、そうしたDXを子供の頃から当り前のように利用しているのが「Z世代」の人たちです。
この「Z世代」というのは、マイクロソフトからWindows95が発売された1990年代後半から2010年頃までに生まれ、年令的には10代から20代前半の人たちを指すと言われます。

同じような言葉として「X世代」「Y世代」というのもあり、これらはアメリカで使われ始めた呼称です。もともとアメリカでは1960年~70年代生まれを「X世代」、80年~90年代前半生まれを「Y世代」と呼んでいましたが、その流れでそれに続く世代を「Z世代」と呼ぶようになりました。しかし日本では「X世代」「Y世代」はあまり使われず、「Z世代」だけが注目され使われています。
「Z世代」はデジタルネイティブとも呼ばれ、生まれた時からパソコンが手元にあり、今ではスマホやタブレットを駆使してSNSによる情報収集や発信を繰り返しているまさにDXの世代です。

Z世代
〇〇世代という呼称は、日本でもこれまでいろいろと使われてきました。主なものはまず戦後のベビーブームだった1947~49年生まれの「団塊の世代」で、学生運動を経験し高度経済成長期が始まった頃に社会人となった世代です。
次の1950〜64年生まれが「しらけ世代」と呼ばれ、現在のほぼ60代の人たちで、団魂世代に比べ無気力・無関心であったことに由来します。次いで似たような「新人類」という言葉も登場しました。
その後は 60年代後半に生まれ、バブル景気の頃に社会人となった「バブル世代」で、長時間労働や接待が当たり前の人たちでした。次いで1970年代以降に生まれた「就職氷河期世代」は失われた世代とも呼ばれ、バブルがはじけて正社員になれず非正規で働くことが多かった人たちです。この「就職氷河期世代」は「団塊の世代」の子供の「団塊ジュニア世代」とも重なります。

次が1990年代から2000年代前半生まれの「ゆとり世代」で、詰め込み教育からの転換の時代に学齢期を過ごし、働いて残業するよりワークライフバランスを重視した世代です。これはアメリカの「ミレニアル世代」とほぼ重なり、次の「Z世代」へと続きます。
「Z世代」は日本では少子高齢化のため少ないですが、世界では全人口の約3割を占めるほど多く、これからの主流となる世代です。さらに近年は次の「α世代」という言葉も登場しています。
相続は遺産を次世代にバトンタッチするものと言われますが、こうした新しい世代は急激に変化するDX社会の中ではたして遺産をうまく承継できるのでしょうか。昨今の世情を見ると、私などは少々不安になってしまいます。

 

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【2024年1月】
遺言書のデジタル化の動き
 
新年早々、震災や事故が続きましたが、早く平穏な日々が戻ってほしいものです。
さて今回は久し振りに遺言書の新しい動きについて取り上げてみます。
近年は高齢者の方々のパソコンやスマホの使用が増えており、それに合わせて法務省では遺言書のさらなるデジタル化の方法を検討中です。具体的にはこれまで必ず手書きとされていた「自筆証書遺言」の本文においても、パソコンなどデジタル機器での作成が可能という方向で議論が進められています。
遺言書について少しおさらいをしておきますと、まず作成方法には主に二種類あります。一つは公証役場で証人二名立会いのもと遺言者の意思にもとづき公証人が作成する「公正証書遺言」です。こちらは間違いが起こりにくい確かな方法ですが、手続きがやや面倒なのが難点です。

あと一つは遺言者が自分で自由に手書きで作成する「自筆証書遺言」です。こちらは作成は比較的容易ですが、全文を本人が手書きしなければならず、また書式に不備があれば無効となります。さらに第三者による改ざんや紛失といったリスクもあります。
この「自筆証書遺言」に関しては、これまでそのリスクやデメリットを少なくするためいくつかの対策が講じられてきました。そして民法改正による方式緩和によって、本文を除く財産目録についてはパソコンでの作成が認められ、また預貯金などは通帳コピーを添付し、それに署名押印することが認められるようになりました。

遺言書デジタル化
さらに保管場所がわからなくなったり、偽造や破棄される心配を無くすため法務局で保管できる制度が設けられました。この際に法務局がある程度様式のチェックをしてくれる他、画像情報として保存されるため相続人などからの請求に応じて証明書を発行してもらえたり、相続人死後の家庭裁判所による「検認」も不要となるなどのメリットがあります。この保管制度の利用件数は、現在年間約1万8000件ほどになっています。
このようにさまざまな対策が取られてきた「自筆証書遺言」ですが、今後のデジタル化で議論される方向としては本人の意思確認及び改ざん防止策が焦点になりそうです。そのため手書き署名や電子署名の活用、あるいは入力する様子の録画や代理として家族の入力を認めるかどうかといった案が議論されるようです。

いずれにしても遺言書を作成するには、まず相続人が誰で、相続財産はどれだけあるかをきちんと把握することが必要です。最近は金融資産もオンライン化やキャッシュレス化が進み、必ずしも通帳や証券といった目に見える形で確認できないこともあります。こうしたものを逐一チェックし、財産目録を作成しておくことが大切です。
また複数の相続人に対し、遺産を誰にどのように分割して相続させるかの問題があります。それには相続税のことを含め、相続人の間で不公平感が出ないように十分配慮して遺言書を作成することも大切と言えます。

 

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