海外在住者の相続手続きについて

新型コロナウイルスの感染もようやくピークアウトしたようで、これからは自粛生活も徐々に緩和されそうです。しかしもうしばらくは気を引き締めたいものです。パンデミックがあっという間に世界に広がったように、人と経済の動きは国境を超えてますます拡大しています。今や日本においても留学や海外勤務、国際結婚、さらにはリタイア後の第二の人生など、さまざまな理由により海外で長年在住する人たちが増えています。
そうした人たちに相続の問題が起こった時(被相続人としてあるいは相続人として)は、どうすればよいのでしょうか。今回はそうした海外在住者に関する相続手続きの話をしてみたいと思います。

一口に海外在住者と言いましてもその居住や生活のしかたはさまざまで、住居形態や居住期間、財産の蓄積方法などもいろいろです。場合によっては外国籍を取得した方もいるでしょうが、ちなみに日本国籍を喪失していると日本の法律が適用されなかったり複雑になることが多いので今回は対象外とし、ひとまず日本国籍のある方の相続ということに話を限定させていただきたいと思います。
ここでまず注意していただきたいのは、被相続人が海外で財産を蓄積している場合です。簡単に言いますと被相続人と相続人の両方が海外で10年以上居住している場合は、被相続人の海外の財産は日本の相続税の対象とはならず、日本の財産のみが対象となります。逆に言えばそれ以外は、被相続人の海外の財産も相続税の対象となります。そして基本的にはその遺産を受け取る相続人に対しては、日本の相続税が課税されることになります。

このように被相続人が海外で取得した財産がある場合はそれが含まれるかどうかをまず判断し、相続財産の範囲や金額を明確にすれば、あとは誰が相続人になるかを確定させるなどは通常の相続と同じです。
その相続手続きにおいては、被相続人の遺言の有無が一つのポイントとなります。遺言書があれば相続人に対する遺産分割も比較的スムーズに行くはずですが、なければ相続人同士が集まってあるいは電話やメールで話し合うなどの方法により遺産分割協議を行い書面を作成しなければなりません。

この遺産分割協議書の作成には、各相続人の署名捺印(実印)と印鑑証明書が必要となります。日本国内に住民票がある場合は容易に作成できますが、海外在住者で住民票を抹消している場合はそれに代わる「サイン証明」(サインでの印鑑証明書の代り)と「在留証明」(住民票の代り)の二つの書類を海外で用意しなければなりません。このためにはそれぞれ在住の国の在外公館(大使館や領事館)にご本人が直接出向いて遺産分割協議書にサインすると同時に、これらの書類を発行してもらいます。
ただし日本国籍があることや、現地に3ケ月以上滞在してその時点で居住していることなどが条件となります。申請に当たってはパスポートやその他居住していることを示す書類(たとえば公共料金の請求書など)も必要となりますので、事前に確認の上持参して手続きしてもらえれば、遺産分割協議書が作成できます。
いずれにしましても海外在住者の場合はその後の手続きも何かと難しいことがありますので、やはりひとまず専門家に相談されることをおすすめいたします。