ttl1

「相続放棄をしたい」考えるべきケースとは?

自分が相続人になったと分かった時、その財産を必ず相続しなければならないというわけではなく、相続放棄という相続しない手段をとることも可能です。相続放棄をする理由は人によってさまざまですが、一般的な理由として4つほど挙げられます。


被相続人に借金がある

遺産相続というと財産が増えるように思いますが、相続するのは決してプラスの遺産だけではありません。借金やローンなどのマイナスの遺産が相続されてしまうのを防ぐ手段として、相続放棄します。


被相続人の残した土地や家に価値がない

折角残してくれた土地や家でも、ほとんど資産価値がない場合があります。その場合、今後固定資産税を払ったり管理しなければならないことなどを考えると相続放棄する理由となる場合があります。


遺産の土地の借主とのトラブルに巻き込まれたくない

たとえ相続した土地に価値があったとしても、他人に貸している土地を相続することによって土地の管理を引き継いで行う義務も生じます。借主との折衝が必要になることもあり、トラブルに巻き込まれることも想定されます。また、土地が共有であると共有者間での調整もでてくるでしょう。そういったことを回避したいと考えた場合は、相続放棄を選択することもあります。


相続人同士(兄弟姉妹等)との話し合いで放棄することにした

親の財産を相続するにあたって、兄弟姉妹など家族・親戚同士で分割方法を話し合うことになります。その話し合いの結果、生前の故人との関係性などから、遺産を相続しないとなる場合あります。その場合も、相続放棄という手段をとることがあります。

 

相続放棄にはどんな書類が必要?

相続人にならないと決めたら、相続放棄をするための手続きが必要になります。まずは、相続放棄の手続きのためにどのような書類を準備しておく必要があるのかをみていきましょう。


相続放棄申述書

申述人(相続放棄する人)や被相続人の本籍や住所、氏名などの情報、相続放棄をする理由、遺産の概略について記入します。書類は家庭裁判所でもらえる他、インターネットからダウンロードして使うことも可能です。


亡くなった方の住民票除票又は戸籍の附票

被相続人の最後の住所を証明するために提出します。

戸籍の附票は、あまり知られていませんが、住所の移転履歴を示すものです。本籍地の市区町村役場に請求して手に入れます。郵送での取り寄せも可能です。


相続放棄する方の戸籍謄本

相続放棄する方の戸籍謄本は必ず提出しなければなりません。

本籍地の市区町村役場に請求して手に入れます。郵送での取り寄せも可能です。


亡くなった方の戸籍謄本

被相続人が亡くなったことなどを証明するために提出します。

相続放棄する方と亡くなった方の関係(配偶者、子や孫、父母や祖父母、兄弟姉

妹)によって、最後の戸籍謄本だけでいい場合やそれ以前のものも必要な場合に分

かれます。

本籍地の市区町村役場に請求して手に入れます。郵送での取り寄せも可能です。


その他

その他に、800円分の収入印紙、切手、郵送用の封筒などを用意する必要があります。

 

相続放棄の流れとすべきこと~期限に注意しよう~

相続放棄をするまでの具体的な手順はどうなっているのか、申述書の作成の前段階から受理された後まで、流れを追ってみていきます。相続放棄の手続きは、相続があると知ってから3ヶ月以内という期限があり、それまでに放棄しないと単純承認とみなされてしまいます。


相続財産・負債の調査

相続財産・負債の調査は、相続放棄の際に必ず必要な手順というわけではありません。明らかに負債が多いと分かっている場合、財産の有無に関わらず放棄すると決まっている場合には、財産の調査をする必要ありません。


相続放棄の熟慮期間の延長

相続放棄の期限は上述のとおり3ヶ月です。財産の調査や話し合いに時間がかかり、この期間にどうしても間に合わないという場合には、相続の承認または放棄の期間(熟慮期間)を伸ばすことが可能です。

延長の申し立てには、家庭裁判所に対して「相続の承認又は放棄の期間伸長家事審判申立書」を提出します。その他にも、被相続人の戸籍謄本、住民票除票又は戸籍の附票、延長を求める相続人自身の戸籍謄本、申立人の利害関係を証する資料などを揃えて提出する必要があります。


相続放棄の申述書の作成

相続放棄の申述書は、家庭裁判所で受け取るか、インターネット上からダウンロードすることができます。遺産相続の概略、申述した理由などを記入します。


相続放棄の申述

相続放棄の申述書の作成ができたら、その他の書類と合わせて家庭裁判所に提出します。提出先は、被相続人(故人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。


裁判所からの照会への回答

申述書の提出後に家庭裁判所から「状況確認書類(照会書)」が郵送されてきます。この書類の内容を確認し、質問事項への回答、署名、押印した上で家庭裁判所に返送します。


相続放棄の受理

照会書の返送後に家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」という書面が届いたら、相続放棄の手続きが正式に完了したことになります。


相続放棄の申述受理後の対応

相続放棄の申述が受理された後に、必要があれば「相続放棄申述受理証明書」を発行してもらうことが可能です。請求を受けている債権者に相続放棄したことを示すためなどに使います。

 

相続放棄を自分でする際に知っておきたいこと5つ

相続放棄をする上で、頭に入れておかなくてはいけないポイントが5つあります。相続放棄するタイミング、相続放棄をすることでどうなるのか、本当にすべての財産を放棄しなければいけないのかなど、相続放棄するにあたって気になる点をみていきましょう。


相続開始前に相続放棄は出来ない

相続放棄ができるのは、相続が始まってから(被相続人が亡くなってから)です。生前には相続放棄をすることができません。


相続人全員が相続放棄をした場合はどうなるのか?

相続放棄は、相続人一人一人が手続きする必要があります。相続人全員もしくは一部で一緒に相続放棄をしても問題はありません。相続放棄をしたからと言って遺産がなくなるわけではなく、一定の手続きを経たうえで、プラスの遺産が残っていれば最終的には国のものになります。


相続放棄をしても「財産を管理する義務」からは逃れられない

相続財産を放棄した場合であっても、一定の時点までは家屋の管理義務は残ります。老朽化しているなどで倒壊の恐れがある場合もあり、相続放棄したからといって安心できない場合もあります。


相続放棄をすると基本的に代襲相続はできなくなる

先順位の相続人が先に亡くなってしまっている(親より先に子が亡くなっているなど)場合にその下(孫)の世代に財産が「代襲相続」されるところ、相続放棄した場合には代襲相続は行われません。


生命保険や退職金、遺族年金は相続放棄をしても受け取れる

生命保険や退職金、遺族年金は相続財産に含まれないと考えられているため、相続放棄をしたとしても受け取りは可能です。

 

相続放棄の手続きの代行を依頼するなら

財産の相続を放棄するからと言って、すぐに遺産相続と関係がなくなるわけではなく、相続放棄するための手続きにも時間と手間がかかります。相続放棄する可能性が高いのであれば、早めに専門家に相談して、手続きを代行してもらうことで全て任せることができ、煩わしい手続きからは解放されます。

また、遺産を相続するべきかどうかと決めかねている時に、専門家に相談に乗ってもらうことで解決することもあります。実際に相続したらどうなるか、相続放棄したらどうなるか、という具体的なことを考えられるのは、多くの相続案件を扱っている専門家だからこそです。


司法書士

司法書士は、相続放棄に必要な書類を作成、収集してもらうことが可能です。司法  書士へ相続放棄の手続き代行を依頼した場合の費用は1人につき約3~6万円程度が相場となっています。


弁護士

弁護士は相続放棄をするための手続き(戸籍の取得や申述書の提出など)をすべて代行可能です。照会書の送付先なども弁護士宛てになるので、相続人は相続放棄の手続き完了まで弁護士に任せることができます。代行の手数料として5万円~10万円程度が相場となっています。


行政書士

行政書士は、家庭裁判所での相続放棄の手続きを代行・代理することは法律上できません。

 

手続きの手間をできる限り減らしたいのであれば弁護士に、あまり費用はかけたくないけれど申述書の作成などに不安がある場合は司法書士に、という風に依頼先を選びます。

 

まとめ

相続放棄をするためにも申述書の作成や書類集めなど多くの手間と時間がかかります。さらに相続放棄には期限があり、期限を過ぎると相続放棄ができなくなる可能性があります。相続放棄をする可能性がある時は、早めに専門家に相談して準備を進めていきましょう。